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幼馴染というか兄妹というか大事な友達というか

そんなかけがえのない存在だっただけで。

でも、お互いに愛していたのだ。

ただ、二人は相反する存在のため、本来であれば許されざる愛だった。

だから、二人は妥協していた。

いや、無意識下で妥協せざるを得なかったのだ。


  お題をお借りしております→chocolate sea

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 2017_05_03



 クルガは自身の嬉しい状況に困惑していた。
 朝、目が覚めて起きたら、マナがベッドに入り込んでいた。
 クルガが愛するマナは、すやすやと安心しきった寝息を立てて一緒のベッドに眠っているのだ。しかも、マナはクルガにぴっとりと密着している。
 クルガは混乱しながら、マナに声をかけた。
「マナ、ここ、俺のベッドだよ。」
「…うん、クルガ…。知ってる…。」
 どうしてここで寝ているのか、クルガには全く見当がつかなかったが、本日彼は食事当番だったため、マナはそのままにしてそっと部屋を出て行った。

「朝起きたら、マナが俺の布団に入って寝ていたんだ。ククだったらどう思う?」
「え、うーん、マナはクルガと一緒に寝たかったのかなぁ。」
「それって、俺のこと好きってことっすかね?」
「…確かに、好きな人とは一緒にいたいと思うけど…。」
 アルトフールの皆の朝食を作りながら、純朴なククとクルガは会話を交わす。
「でも、クルガ、布団の中に入って来たから自分のことが好きだなんて、ちょっと短絡的すぎるんじゃないかな。うぬぼれも良いところだよ。」
「だって、布団の中に入って来たんすよ?もしハッシュがククのベッドに入り込んで寝てたらどう思うっすか?」
「え、ちょっと引く。」
「なんでっすか?嬉しくないんっすか?」
「勝手に入って来られても、困るよ。涎とか垂らして寝てたら恥ずかしいもの。」
「むむ、確かに。」
「それに、クルガ、相手はマナだよ?マナのことだからどうせ突拍子もないことでクルガの布団に潜りこんでたに違いないよ。」
「そう言われてしまうとそうなんすけど。」
「きっと深い意味はないよ。あまり考えない方が良いよ。」
 ククに諭され、クルガは今朝の出来事に関しては深く考え無いようにしようと思ったが、どうしてもマナがいた時の温かみやドキドキ感が自然と思い出されて、やっぱり自分に気があるのではないかと考えてしまう。クルガは、雑念を振り払うかのように頭を振って目の前の野菜を切ることに集中した。

 しばらくすると、食堂はニタを初めとして朝ごはんを求める住人達で賑わって来た。
 ククとクルガはせっせと配膳を行う。
「マナ、どうして今日はクルガの部屋なんかいたの?」
 クルガの姉であるアリスがマナに尋ねる。二人は一緒に食堂にやって来て一緒の席で朝食を取っている。
 マナは味覚を感じることが出来ないが、黙々と朝食を口に運ぶ。彼女らしい独特の間を取った後、彼女はアリスの質問に答えた。
「クルガと寝たかった。」
 アリスはもぐもぐと口を動かしながら、黙ってマナの次の言葉を待つ。無表情であるが、内心驚いていた。
「クルガは温かいから。なんだか昨日は急に寒くなって目が覚めた。だから、クルガのところに行った。」
 淡々と語るマナはいつもの通りだ。
「マナ、クルガのこと好き?」
「うん。」
「その好きって、どういうもの?ククやアルティと同じ『好き』?」
「違う。」
 アリスは噎せた。マナの返答にびっくりして、呑みこもうと思っていた物が吹き出しそうになるのを抑えたら変なところに入って行ってしまったらしい。アリスは水を飲んで呼吸を整える。
「ううん。じゃぁ、ククがハッシュに思う気持ちと同じ?」
「…それは、分からない。私はククじゃない。でも、そうだったら幸せだと思う。」
 アリスは嬉しそうに、マナを見つめた。アリスはマナの片腕として、マナの面倒を見て来たが、その前に自身はマナの友人の一人であると信じて来た。マナがアリスのことをどう思っているかは知らないが、アリスは友人であるマナの心境の変化を微笑ましく感じた。彼女はマナのことをまるで人形のように感情がない人だと思っていたが、徐々に人間らしい優しい一面をみせるようになって来ている。
「そっか。ククと同じ気持だったらいいね。」
 マナは静かに頷いた。そして、再び黙々と食事を取り続ける。
 不老長寿のマナは心が壊れていたから、老うことがなくなったのだろう。機械のように、人形のように変わらずに居ただけだ。
 アルトフールで過ごすことによって、彼女は少しずつ愛を思い出し、少しずつ時間も動き出しつつあるらしい。


 2015_12_23


お題配布元:月と戯れる猫

滑り込みセーフ!
ハロウィンのお話その2です。



 2015_10_31


お題配布元:月と戯れる猫

ハロウィン用に去年かいていた物。もう収集がつかなくなったので、うpします。

実はハッピーエンドですが、説明不足でバッドエンド風味。

バッドエンドなのも良いじゃない。



 2015_10_30


 彼女が持つ翼は神聖味を持って光り輝いているのだろう。
 俺には見ることが出来ないのだが、彼女の背中には天使の翼が付いているはずだ。
 下界に降りて来たということは、彼女は天使ではなく堕天使なのではないだろうかという懸念はある。
 が、詳しいことは聴かない。彼女が天使であろうと堕天使であろうと、彼女は彼女だ。そして俺にとっては天使なんだ。
 その春の陽気のように無邪気な笑顔や天真爛漫な性格。お日様の光と同じ金色のふわふわのロングの髪。太陽にかざすと透き通って本当に綺麗なんだ。あと、それとなく香る甘い香り。彼女の全てがこの世のものとは思えない。だから、あいつは俺にとっての天使ちゃん。
 
「もー、ディレィッシュ、すぐ部屋汚くする!また発明品自分で踏みつけて壊しちゃうんだから!」
 口を膨らましてぷんぷん怒るアルティメット。ああ、かわいいなぁ。俺の天使ちゃんは、ことあるごとに俺の部屋にやって来る。決まって俺が研究や発明に勤しんでいる時にやって来る。まぁ、ぷんぷん怒るのも最初のうちで、すぐに大人しくなってその辺のガラクタを弄ったり、静かに本を読んだりしている。決して片付けはしない。出しゃばらないところが良いと思う。部屋は散らかっているが、俺自身はどこに何があるかは覚えているから、片付けられても困るのだ。アルティメットはそれを知っている。流石俺の天使ちゃん。
 最近はちょっとした手伝いを頼むと、喜んで引き受けてくれる。まるで俺の助手のようだ。可愛い助手め。
「はい。出来たよ。これとこれとこれ、くっつけた。」
「はい、ありがと。じゃぁ、ちょっと外に出て合体させてみようか。俺がこれを持っていくから、アルティはドア開けてくれる?」
「分かった。」
 まるで子犬のように素直に言うことを聞いてくれるアルティメット。可愛いな。
 俺達二人は外に出て、ガレージに向かう。ここガレージには俺の結構大きめの発明品が保管されてある。今回は、≪空飛ぶ円盤≫を作っている最中だ。
 この≪空飛ぶ円盤≫は、その名の通り空を飛ぶ。この円盤に立って乗る。この円盤部の下方には魔力を源としたエンジンがついていて、空を飛ぶ仕組みになっている。円盤にはT字型の棒が垂直に刺してある。この棒のTの部分にグリップがついているので、このグリップの部分を自転車のハンドルのように握ってバランスを取って空を飛ぶことが出来る。
「これをくっつけたら、ちょっと今日は試乗してみよう。少しだけ浮けば大丈夫だ。」
 先ほど自室で作った部品を空飛ぶ円盤にくっつける。サイドに何もないと浮いている間不安定かと思い、羽を模した飾りをつけてみた。これでうっかり足元を滑らせることがないだろう。
 そして、外までアルティメットに空飛ぶ円盤を運んでもらう。アルティメットはその可憐さに似合わず力持ちだ。とんでもない力を持っているが、アルティメットの可憐さは揺るがない事実なので、力持ちでもやはり可愛い。小さい体が大きな円盤を運んでいる様子を見ると、即頭をなでなでしてあげたくなる。
「ここで良い?」
「あぁ、ありがとうな。じゃ、試しに乗ってみよう。」
 そして、俺とアルティは円盤の上に乗る。魔力はハンドルを通して伝わるので、アルティメットにハンドルを握ってもらう。が、ハンドルの舵をアルティメットだけに任せるのは不安だから、後ろから俺もハンドルを握ってバランスを取る。
「よし、じゃぁ、飛ばすぞ。アルティメット、そこのボタンを押してごらん。」
「OK。」
 ハンドル傍のボタンを押せばエンジンが作動する。
 ふわり、と浮遊感を覚えると、空飛ぶ円盤は地面を離れてゆっくりと前進を始める。
 重力に打ち勝った我々はふわふわと低空を飛び続ける。
「わー、ディレィッシュ、空飛んでるねー!すごいすごい!」
 アルティメットは喜んでいるようだ。笑顔が見れて何よりだ。でも、アルティメットならば、その天使の翼でもっと大空を自由に羽ばたいていたのだろうけど。
 と、その時、円盤部から、ガコンと大きな音がなった。すると、ぐらぐらと揺れ始め、エンジンは過剰な出力を始め、円盤部は加速しながら高度を上げていく。
「こ、これはまずい。」
 どうやら今回の試乗は失敗に終わりそうだ。
 円盤は上昇したり下降したりを繰り返す。かろうじてバランスは取れているが、いつ振り落とされてもおかしくない状況だった。円盤からはキラキラと虹色の魔力の分子が噴射される。まるで光の翼のようだ。
「あはは、ディレィッシュ楽しー!」
 こんな状況ではあったが、アルティメットは楽しんでくれている。いやぁ、何よりです。…とでれている場合じゃない。円盤部からは黒い煙が上がるようになった。そして、物凄いスピードで上昇していくが、いつ壊れるか分からない。バランスを取りながら、次の一手を考えるが、円盤はボンと爆発して、壊れてしまった。俺達は空中に放り出された。
 どうやったらアルティメット守れるか。下敷きになってでもアルティメットを守らねばと頭が一杯だったが、一向に地面は近付いて来なかった。
 ふわふわと白い羽が舞い落ちて来る。上を見上げるとアルティメットが俺の腕を抱えていた。その背には大きな真っ白の羽が羽ばたいている。これが神秘的に輝く天使の翼。
 アルティメットと目が合うと、アルティメットは屈託のない笑顔を浮かべながら
「空飛ぶ円盤は壊れちゃったけど、楽しかったね!」
と、話しかけて来た。俺もアルティメットの笑みにつられて、顔が緩む。
「だな。やっぱ、重力から自由になるって、楽しいな。」
「ね!」
 結果的に試乗は失敗に終わった挙句、私はアルティメットの力によって空を飛んでいた。
 アルティメットと二人きりでゆっくりと空の旅を楽しみたかったけど、仕方がない。また一から研究をやり直して、空を飛ぼう。
 青空にアルティメットの神聖なる天使の翼は、太陽の光できらきらと輝いていた。

 2015_07_25


  お題をお借りしております→chocolate sea




 鬱蒼とした木々に包まれた夜の森は真っ暗だった。かろうじて木々の間から差し込まれる月光でぼんやりとニタとハクアの存在が判別できる程度だった。
 ニタのお出かけ用ポシェットからカンテラを取り出し、辺りを照らし先へ進む。
「フォシャってどんな人なの?」
「うーん、一言でいえば変態かな。」
「…そう。」
 ニタは身近にいる金髪碧眼の男を思い出した。変態は身近にいるので間に合っているのだが。
「アルトフールにはいないタイプね。」
 金髪碧眼の彼とはまた別のタイプであることを耳にし、ニタは不安に心を曇らせた。
「確かフォシャは真っ白な家に住んでいたはずなのよね…。月明かりが眩しい今日ならば、おそらく目立つとは思うんだけど…。」
 そう言いながら、二人は夜の森の中を進んで行くと、暗闇にほんのり浮かび上がる真っ白な建物が見えて来た。ニタは「あれがフォシャの家だね!」と言って駆け出したので、ハクアも駆け足でそれに着いて行った。
 フォシャの家はアパートのような四角い形をしていた。三角の屋根もなく、立方体の態をした家である。まるで豆腐のような外見であるが、窓の付き方から2階建ての建物であると予想された。
「ところでドアはどこにあるの?」
 フォシャの家の外周を回りながら、ニタがハクアに尋ねる。ハクアはやれやれと言った様子でため息を吐くと、「この家にはドアがないから、破壊しなさい。そこがこの家の玄関よ。」と言った。
「なんだそれ。まぁ、いいけど。じゃぁ、壊すよ。」
「ええ。構わないわ。ニタならできるでしょう。」
 ニタは真っ白な壁に向かって拳を突き出した。どんと音がしたが、壁には凹んだ様子も傷がついた様子もなかった。ニタは、首を傾げながら、もう一度壁を殴るが、結果は同じだった。ニタはどういうことかとハクアを見つめた。
「本気で壊しなさい。この建物はエナメルと象牙が素材となっているから。」
 それって硬いもの?と呟きながらニタは己の拳に力をためる。
 ハクアは懐から小瓶を取り出し、中の液体を壁にかけた。ふわりとアルフェン糖の砂糖菓子のような甘い匂いが漂った。
 そして、ニタは周りの自然が持つエネルギーを拳にまとわせ、ニタの体が光に包まれた時、渾身の力を込めて白壁に攻撃を加える。拳だけでなく脚も使い、白壁の破壊を狙う。
 大きな衝撃音と共に、白壁は、ハクアが液体をかけた部分のみボロボロになって破壊された。
「ハクア、一体何をかけたの?」
「残ったアルフェン糖の砂糖菓子を溶かしたもの。アルフェン糖には、ミュータンス連鎖球菌が既に潜んでいるのよね。」
「牛タン酢レンジ求肥?」
「なんかのレシピみたいね。さ、行きましょう。しばらくすると、ここ、閉じちゃうからね。」
「え、なにそれ。」
 二人は無理矢理こじ開けた玄関口からフォシャの家に入っていった。
 中に入ると、そこは上品な深緋色の床、壁、カーテン、家具に包まれた妙な空間が広がっていた。そして、みょうちきりんな恰好をした生物、いや、人が、二人を待ち構えるように、ふわふわと浮かんでいた。
 髪の毛はプラチナブロンドをベースに所々ピンクや赤、緑などのメッシュが入っており、シルバーの貫頭衣に身を包んでいるが、意匠的に切れ目が入っており、地肌がちらちら見えている。また、貫頭衣からふわふわと水色や黄色の球体が浮かんでおり、人物の奇人性を増長させている。
 化粧の仕方も奇抜であった。人よりも長く量も多い睫は金色でキラキラ輝いており、アイラインも赤く縁取られている。そのくせ唇は水色に塗られており、グロスでつやつや潤っている。
 彼女の様子にニタは開いた口が塞がらなかった。顔見知りであるハクアですら、困惑した表情を浮かべている。
「やぁ、ばい菌ども。」
 更にニタは驚いた。髪も長く、化粧もしているから、ニタは目の前の人物を女性だとばかり思っていたが、その声が女性とは異なる低さを伴っていたので驚いたのだった。男性にしては高めだが、女性にしては低い声だ。
 ”アルトフールにはいないタイプの変態”であるフォシャは、きっとこの男を刺すのだろうということをニタは瞬時に察した。
「君たちは、崇高な存在だ。生物と共に存在し、多くの生物を芯から苦しませることが出来る唯一の存在だ。人々が欲に塗れれば塗れるほど、君たちは見えないところから彼らを戒めて来た。身分の高貴に関わらず、君たちは欲に塗れた人間どもを攻撃した。」
 フォシャは、まるで舞台に立っているかのように過剰な動きで、芝居がかった様子で語り続けた。そして、ニタはフォシャの言う〝君たち″とはニタ達ではないだろうことを感じ取った。
「かの国の女王エリザベータは、その強大な力でかの国を強くまとめあげ、太陽の国の無敵艦隊を撃破し、向かうところ敵なしであった。ただしかし、唯一彼女を苦しめていた存在があった。それは何か。齲蝕―ウショク―だ。彼女は生きている間ずっと齲蝕に苦しめられていた。見えないところから、無敵の女王を君たちは苦しめることが出来た。素晴らしいじゃないか。君たちの功績はそれだけじゃない。これまた某国の暴君ルートヴィヒは君たちに苦しめられたがために、異教徒迫害に勢を尽くしたというじゃないか。どんなに力を持つ者でも、小さな君たちには適わない。素晴らしい存在だ。」
 大きな身振りで、大げさに語り続けるフォシャは自身の体を抱きしめると、静まり返った。やっと大人しくなったと安心し、本題を話そうとしたニタとハクアだったが、彼の劇場はまだ続いていた。彼はくっくっと静かに笑い始め、そして、そのまま高らかに声を上げて笑い始めた。
「はははは。そう、そんな優秀な君たちだが、私の手にかかれば、君たちは所詮微生物に過ぎない。君たちを抹殺し、君たちが破壊した歯牙をも再生する。力を持つ物を苦しめることが出来る唯一の存在である君たちは私には適わない。衝撃の事実だろう。私は全ての生き物の頂点に統べるのだ。なんという悦。これほどまでに気持ち良い悦はない。はははは。はーはっはっは!」
 ニタとハクアは話す気力を失いかけてたが、二人の口腔を救えるのは目の前の変態しかいないのだ。本題に入ろうとハクアは声をかけようとするが、フォシャの視線がハクアに向かう。
「おや、よく見たら、君は悪名高い白魔女じゃぁないか。随分と無様な格好だから分からなかったよ。」
「…あんたに覚えて貰えてなによりだわ。」
「もちろん、僕は『白』が好きだからね。君のことを忘れるはずがない。」
 フォシャのその言葉をきいてニタは背筋がぞくぞくと冷えて行くのを感じた。フォシャのねっとりとした視線はふかふかの白い毛を纏ったニタに向かっている。
「希少なペポ族もいる。しかしながら二人は齲蝕に蝕まれているようだね。悪名高き白魔女も珍獣ペポも分け隔てなく苦しませるとは。あぁ、本当に良くやるよ。ふふふ。美しい。」
「そういうわけだから、フォシャ、私達の齲蝕を治してちょうだい。」
「おや、白魔女の癖に、君は齲蝕の進行も止められないのかい?」
「そこは私の専門じゃないからね。いえ、唯一出来ない分野よ。」
 フォシャの瞳がランと輝く。
「おお!白魔女ですらミュータンス連鎖球菌にかなわないとは!天才ですら適わない齲蝕。やはり僕は唯一無二の存在。至高の存在!」
 再びフォシャの長い口上がはじまり、ニタとハクアはため息を吐いた。そして、ニタはこそこそとハクアに話しかける。
「フォシャって昔からあんな感じなの?」
「うん。そうだけど、昔はまだ落ち着いたファッションだったわ。あそこまで趣味は悪くなかった…。むしろ本当は可愛い顔してたのに…。」
 芝居がかった口上が終了すると、フォシャはにこっと微笑んだ。気味が悪いメイクがなければ、きっと可愛らしい微笑みだったに違いない。
「さぁ、お二人を処置室に案内しよう。しかしその前に。」
 フォシャはニタの傍に近付く。
「白魔女のことは好きだから、お代は頂かないつもりでいたけど、どうだろう、ペポに触っても良いかな。お代はそれで構わない。」
 派手な見た目と性格の割に、変に控えめなところを見てニタは拍子抜けしたが、別に触られるくらいならどうってことないとニタは思い、了承した。きちんと許可を得て触ろうとして来るのだ。拒む必要はない。
 30分くらい、フォシャはニタをもふもふした後、二人の虫歯の処置に入った。
 診察台に仰向けになった二人は、再びフォシャの一人芝居を目にすることとなったが、その間にもフォシャは治療を進めていた。フォシャはどちらかと言えば魔法使い寄りの治癒師らしく、そのフォシャ劇場自体が治療の一環でもあるらしい。時に口腔内に刃物を向け、歯を削ったり、詰めたりしているようだが、おそらく魔力によって菌を抹殺し、歯を再生させていた。
 奇抜なメイクのフォシャの顔がごくわずかな距離まで近付いて来る度、肝が冷え、トラウマになりそうだった。しかし、彼の腕は一流だった。アルフェン糖によってボロボロになってしまった2人の歯は見事に彼の治療により完治し、元通りとなった。
「僕の手にかかれば、アルフェン糖ごときの齲蝕なんて余裕だよ。あぁ、かの時代に僕が誕生していればエリザベートもルートヴィヒも苦しまないで済んだだろうに。」
 再びフォシャの芝居が始まったが、ニタもハクアも右から左に聞き流していた。
「フォシャ、助かったわ。ありがとう。」
「どうってことない。私の手にかかればどんな齲蝕もあっという間さ。本来ならば、お代は弾むところだけど、何せ白魔女とペポが相手ならば、『白』に免除して、お代はなしで良い。なにせ白魔女を蔑むことが出来るなんて、治癒師にとっては最高の快感だ。どんな宝石にも変えられない。あとは希少なペポのフカフカも最高だ。ペポの方は齲蝕に困らずともまた来ると良い。なんならこのまま住んで行っても構わないが。」
「あ、遠慮しておきます…。ニタはアルトフールに住んでるので。」
「ほう、ペポはニタというのだな。よく覚えておこう。」
 ニタは再び背筋に寒気を感じたが、フォシャに愛想笑いを浮かべてフォシャの家を後にした。

 外に出ると、既に明るくなっていた。
 一晩中フォシャの口上を聴いていたのかと思うと、どっと疲れが湧いて来た。
 悪い人ではなかったのだが、新種の変態ということには間違いはなかった。
「虫歯になるたびここに来るのは疲れるから、ニタはきちんと歯磨きをすることを心がけるよ。」
「そうね。私もそうするわ。」
 そうして二人はアルトフールに帰って行った。

 2015_06_07



  お題をお借りしております→chocolate sea





 アルトフールには医者がおり、技術者がいる。食べ物を捌く者もいれば、住人を外敵から守る者がいる。様々な個性が集まって、アルトフールは絶妙なバランスで生活が成り立っている。今のところ致命的な欠如はアルトフールには存在していない、筈だった。

 ある午後の昼下がり、アルトフールでの医療に携わる第一人者であるハクアと守護者兼マスコットキャラクターであるニタはリビングにいた。リビングには二人しかおらず、二人は小さな箱を囲んでひっそりと静まり返っていた。
「良い?これは私達〝白色同盟”だけの秘密だからね。」
 ニタはハクアをしかと見つめて、力強く頷いた。
 ハクアも力強く頷くと、小さな箱に手をかけ、その蓋を開けた。
 その中には動物の姿を模した可愛らしい人形と色とりどりの花や鳥を模したボタン大のガラスの小物が入っていた。
 ハクアは紅い花をつまむと、それを口に運んだ。ニタも青い鳥をつまんで口に運んだ。
 ふわっと広がる砂糖の上品な甘い味。舌触りも滑らかで、優しい。
 二人は幸せそうに頬っぺたを抑える。
「上品なお味~!」
「おいしい~!」
「流石伝説とも呼ばれるアルフェン糖で作られた飴だね。砂糖だけでこんなに違うなんて、やっぱ素材にはこだわるべきだ。」
「そうね。ちょっと、ニタ、飴を噛んで御覧なさい。」
 ハクアに促され、ニタは口の中で転がっている飴をガリと噛む。すると噛んで割れた飴の中から、じゅわりと砂糖水が溢れ出来た。ニタは口を閉じたまま「うおー」と興奮し、目を爛々と輝かせる。
「でしょう。中の汁も極上の甘さでしょう。」
 ニタは何度も何度も頷く。
「ニタ、この人形も食べてごらんなさい。」
 ニタは恐る恐る小箱に入った人形を口に入れる。一口では口に入りきらなかったので、頭の部分だけ口に含んだ。
 人形の方は花鳥とは全く異なる食感であった。
 ニタはケーキの上にある砂糖菓子の食感を想像していたのだが、食感は少々異なっていた。独特の柔らかさはあるが、どちらかというとメレンゲの焼き菓子のようにサクサクとしている。そしてふわりと舌の上で溶けた。甘い味がニタの口の中に広がる。
「うわわ、やばいね、これもめっちゃうまい。」
「でしょう?」
「他の人にあげられないのが残念だ。いや、これはニタ達だけで食べちゃおう。」
「えぇ、それでいいのよ。うふふ、ほんと美味しいわよね。」
 ハクアも人形を頬張る。
「それにしても、どうしてアルトフールはアルフェン糖のお菓子を禁止しているのかしらね。」
「知らない。でも、アルフェン糖は希少な砂糖だから、その辺りに問題があるのかな。」
「例えば、アルフェン糖を精製するのに何百人もの犠牲が払われてるとか?」
「人間の血液を吸収して育っているとか?」
「あぁ、その辺り、怪しいわね。」
「背徳の砂糖菓子ってわけか…。」
 秘密のお菓子を頬張る二人の背後に忍び寄る影1つ。
「動く生き字引ハクアはアルフェン糖のこと、知らなかったのね。」
 ハクアとニタはびくりと体を強張らせて、動きを止める。そして恐る恐る振り向くと、そこには笑顔のアリスが立っていた。
「アルフェン糖、通称『拷問糖』。アルフェン糖って呼ぶのはここ再生と滅亡の大陸のみよ。」
 アリスが穏やかに説明すると、ハクアははっとして口を抑えた。見る見るうちにハクアの顔は青ざめていく。
「拷問糖…!そういうことだったのね!」
 ニタは説明を求めるようにハクアを見つめるが、気付いてもらえなかった。
 アリスは微笑みのまま話を続ける。
「そういうこと。だから、アルトフールではこれを禁止してるの。だって、ハクアには治せないでしょう?」
「…そうね。痛みを抑えることが出来ても、これだけは私の専門外だわ。」
「ねぇ、一体どういうこと?ニタにも教えてよ!」
 しびれを切らしたニタが、説明を求め発言したが、ハクアは青ざめた顔のままニタの頭を撫でた。
「今晩分かるわ。さ、ニタ、甘いものを食べたら歯を磨かなきゃ。行くわよ。」
「えー、まだ残ってるじゃん。」
 と言って、ニタは小箱の砂糖菓子達を指差すが、アリスがその箱を取り上げ
「残念。このお菓子は決まりに則って処分します。」と笑顔で言ったので、ニタは堪忍してハクアと二人で歯を磨いた。
テーマ : オリジナル小説    ジャンル : 小説・文学
 2015_06_07







 2015_03_17








 2015_03_15







 2015_03_14


アルトフールの登場人物で白雪姫パロディをやってみました。

☆配役☆

白雪姫…クク
王妃…マナ
王妃(魔女)…ハクア
王…ディッシュ
狩人…クライド

小人たち…ニタ、クルガ、ムー、アルティ、ビスク、アリス、リマ

王子…ハッシュ


 2015_02_28


 ククの恋愛大作戦はターゲットに対してどう効果を発揮していたのか。
 大団円を迎える前に、その成果を覗き見てみよう。

 少しずつ、彼はククのことをかけがえのない大切な存在だと意識し始めているのか。

 ククの恋愛大作戦はこちら!先にこちらを読んだ方が分かりやすいです。
 ③自分改革、君色に染まって誘惑大作戦
 2015_02_24


 ククの恋愛大作戦はターゲットに対してどう効果を発揮していたのか。
 大団円を迎える前に、その成果を覗き見てみよう。


ククの恋愛大作戦はこちら!先にこちらを読んだ方が分かりやすいです。
作戦開始 上目遣いで可愛く見せよう大作戦
接近希望、スキンシップで一歩前進大作戦


 2015_02_08




本日5日目になります。初日から
読んでない方はこちらから。
1日目




 2015_02_02




本日4日目になります。初日から
読んでない方はこちらから。
1日目






 2015_01_30




本日3日目になります。初日から
読んでない方はこちらから。
1日目





 2015_01_29









 2015_01_27


 

 アルトフールの仲間たちが再び集まって、人狼ゲームを始めるそうです。

ニタ「じゃぁ、今日は村4、霊1、占1、狩1、狂1、狼2、狐1でやっていこうか。この前のクク、ビスク、ディッシュ、マナ、クルガの6人はもちろん。」
アルティ「はーい!今回は私もやるー!」
ニタ「アルティも参戦です。そして新たに…」
アリス「ふふふ、お誘いありがとう。頑張るわ。」
ハッシュ「こういうゲーム、そんなに得意じゃないけど、頑張ってみるか。」
ハクア「天才ハクア様がいれば、勝利は確実よ!」
ムー「僕も参加!頑張ります。」
ニタ「そんなわけで、新たに4人も追加されて、総勢11人の人狼ゲームだ!楽しみだな~!」
ディシュ「ま、初日犠牲だけには気をつけることだな。」
ニタ「前回も1日目に脱落だったからね。ほんとどうにかしてくれ。これは一応リベンジ戦でもあるからね。じゃ、スタートするよー」




 2015_01_26



 とある宴会の最中。

 クグレックはお酒を口にしてしまい、泥酔状態に。

 酔ったククはハッシュとディレィッシュの区別すらつかなくなり・・・



テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 2015_01_24








 2014_10_27







 2014_10_24








 2014_10_19








 2014_10_18



アルトフールの住民の一人、リマ・オーク。

彼女は誰もが羨む絶世の奇跡の美女だった。

彼女を見たものは可愛さのあまり、はっと息をのんでしまう。

可憐な彼女は自身がいかに可憐であるかということを良く知っていた。

そんな彼女の友達と呼べる唯一の存在が純真無垢な天使アルティメットだった。





 2014_10_17



明日の私によろしくね


お題をお借りしました→月と戯れる猫
 2014_10_09







 2014_09_08








 2014_09_07







 2014_09_04








 2014_09_02



 2014_08_29









 2014_08_29









 2014_08_28


 
 ハッシュは1年経っても帰って来なかった。
 今ハッシュはどこでどうなってるのか、それすらも分からない。もしかすると死んでしまったのかもしれない。もういろんなことが考えられてしまうけど、きっとハッシュは無事だと思う。
 なんというか、近くにいるんじゃないかと、そんな気がしてならない。
 だから、私、ちょっとだけ旅に出ることにします。



 2014_07_03




 2014_05_18


魔女の薬は一人のエゴイズムを満たすもの。
本当の幸せは訪れることはないけど、欲望を満たすために人々は魔女の秘薬を欲する。

強大な魔力を持った魔女なのに魔女であることを嫌がる平和主義者のクク
天才治癒術師だけどまるで魔女のよう狡猾で意地悪な性格のハクア

対照的な二人が協同で魔女の秘薬のうちの1つ『惚れ薬』を精製する。






 2014_05_17


<Caution!>
まずい食事の表現を取り扱っていますので、食事中もしくは食事直後の方は閲覧を控えて頂くようお願いいたします。




 2014_05_14



「来てしまうのか、この日が。」
「うん。来ちゃうね。」
「大丈夫よ、胃薬や食中りの薬、作ってあるから。」
「てゆーか、お前の姉だろ、何とかしろよ。」
「それを言うなら、ククさんこそ未来の義兄っすよ。何とかして下さいよ。」
「え、そう言われちゃうと照れちゃうな。えへへ。」
「ねぇ、マナのリーダー権限であの二人を外すことは出来ないの?」
「彼らは作りたいと言っている。彼らの意志を尊重しなきゃ。」
「とはいえ、彼らの意志を尊重した挙句、アルトフールに危機が訪れて崩壊してしまったらどうするのさ。」
「…生きることは、必ずしも楽しいことばかりとは限らない。たまにある苦しみも、生きることのスパイスとなり、彩を添えるもの。…ふふっ。」
「あ、マナが笑った。」
「マナ、ぶっちゃけ楽しんでるでしょ…。苦しみって認識できているんだから…。」


chocolate sea 様よりお題をお借りしております。






 2014_05_01



ディシュ「さぁさぁ、人狼ゲームやろうぜ!」
ビスク「お前、好きだな。人狼ゲーム。」
アルティ「今日は私ゲームマスターやるー。」
ニタ「今日は少人数村?今リビングにいるのはうちらと、クーちゃん、マナ、クルガの7人で、アルティがGM。」
マナ「すぐ終わるならやってもいい。」
クルガ「マナがやるなら俺もやる!」
ニタ「くーちゃんもね!」
クク「(私何も言ってないのに。)」
ディシュ「じゃぁ、狼1狐1村人4で行くぜ!」
ニタ「負けないぞ!」




 2014_04_30



 2014_04_05


 あんな場面を目撃しても私はあなたを想うことを止められない。
 ハッシュはハッシュが想う人と一緒にいるべきなんだと思う。だってそれがハッシュの幸せならば、私はそれを願わなきゃいけないでしょう。
 ハッシュが幸せならば、私も幸せ。
 だから、私は、この気持ちに終止符を付けなければならない。
 ウミガメのネックレスが壊れたのもそういうことなんだ。

 ククの恋愛大作戦最終章!

  お題をお借りしております→chocolate sea



 2014_04_05


マナの午睡。

アルトフール最年長の彼女は沢山の大切な人達を見送って来た。

皆のことが大好きだった。

自分の特異性に絶望して、心を失いかけた彼女は感情をなくしてしまった。

だがアルトフールに来て、少しずつ人間らしい感情を取り戻しつつあるらしい。

青年クルガは、彼女のそんな過去と変化を知らない。



 2014_03_27



 2014_03_25



 2014_03_25



 2014_03_24



 2014_03_24



 2014_03_23


ククの恋愛大作戦第4弾!

ハッシュにククを意識させるために荒療治を敢行。

悪魔ビカレスクが参戦することとなり、物語は急展開を迎える。


  お題をお借りしております→chocolate sea






 2014_03_23



 2014_02_25


ククの恋愛大作戦第3弾!

今回はあなた好みの大人の女性に変身して近付きます! 

少しは私のこと、見てくれるかな。

私は立派な女性だよ。

  お題をお借りしております→chocolate sea






 2014_02_25



魔女ククは
彼の傍にいたい
触れ合っていたい

それだけで彼女は幸せなのだ

  お題をお借りしております→chocolate sea



 2014_02_15

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