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 その夜、湯浴みを終えて、寝巻に着替えて後は寝るだけとなったニタとクグレック。
 お互いベッドで横になっていたが、ランプを消してしまおうとクグレックがランプに手をかけた時、ニタが小さな声で話しかけてきた。だが、あまりにも小さな声だったので、クグレックには聞き取れなかった。ランプを消し、ベッドに入り込んでから「ニタ、なんか言った?」と聞き返した。
「ん、いや、クク、どうして、あんなこと言ったの?」
「あんなこと?」
「自分は魔女だ。だから、連れてけって。」
「うんと、良く分からない。なんだかニタが必死だったから。助けなきゃって。」
「山賊とか、怖くないの?それに、魔女だってばれたら、差別されるかもしれなかった。」
「山賊については、ここまでくる間に時々そういう輩出て来てたけど、ニタが全部やっつけてくれたから、心配ないかな、と思って。それにこの前魔導書を読んだから、魔法も少し覚えたし、私もニタの力になりたかったの。そのためなら、魔女だって明かしても全然平気。ただ今日使った幻影の魔法はね、覚えたてだったから、上手く出来るか心配だった。杖の代わりにスプーンを使ったんだよ。」
「そう…。」
「それに、メイトーの森では、ニタが私のこと友達と言ってくれた。だから、…私、」
 クグレックは口籠る。
「友達のニタのこと、助けなきゃいけなかったの。」
 クグレックの声は嬉しそうだった。
 それに対するニタからの返答は何もなかった。暗闇を沈黙が支配する。
 クグレックが眠りの航海へ発とうとした頃、ニタがぽつりと呟くように言った。
「ニタの故郷とニタの仲間、ぜーんぶ、ニンゲンに燃やし尽くされたの。」
 クグレックの眠りへの船は一瞬にして港に引き戻された。ニタの発言はクグレックにはあまりにも衝撃的過ぎた。
「ペポ族は全員人間に狩られた。だから、ニルヴァを狙う山賊が許せなかった。ククのこと、巻き込んじゃって、ごめんね。」
 クグレックはニタにかける言葉が見つからずに押し黙ってしまった。
 ニタがドルセードの汽車の中で放っていた「人間は、怖いんだよ」という言葉はそういうことだったらしい。
 きっとあの灰色のローブを着ている間中、ニタはずっとその悲しい過去のことを思い出していたのだろうか。それならば、大人しくなってしまうのも仕方がなかった。メイトーの森を出てからずっと、ニタはそんなことを一人で背負っていたのか、と考えると、クグレックは本当に悲しみで心が締め付けられそうだった。
 そして、再び暗闇からニタの声。

「こんなニタで、ごめんね。おやすみ。」

 ニタの声はとても悲しそうだった。

 祖母が死んだだけで、クグレックは死にたいくらいの気持ちに陥った。
 大切な存在を沢山失ったニタの気持ちは想像を絶するものだったのだろう。
 ただ、クグレックはニタがいたから、少しだけ前向きになれた。だから、クグレックもニタにその恩返しが出来れば良いな、と切に願った。

「…おやすみ。」

 

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