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お題配布元:月と戯れる猫

滑り込みセーフ!
ハロウィンのお話その2です。



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 2015_10_31


お題配布元:月と戯れる猫

ハロウィン用に去年かいていた物。もう収集がつかなくなったので、うpします。

実はハッピーエンドですが、説明不足でバッドエンド風味。

バッドエンドなのも良いじゃない。



 2015_10_30



**********

 ピアノ商会から近いところに、二人は宿屋を取った。朝食と夕食がついてなかなかのお値段だったが、二人はこれまで野宿を取ったり、ポルカではニルヴァ防衛の功績が称えられて宿泊費、食事代がタダになったりしていたので、お金に関しては余裕があった。
 夕食に関しては、ポルカの食事の方が美味しかったが、野宿でニタが調達してくる野性味あふれる食事よりは全然美味しかった。

 翌日、二人はピアノ商会へ向かった。
 ニタはこのまま突入しようと提案したが、クグレックが必死に危険性を説得して、突入することだけは避けられた。
 その代わり、ピアノ商会の向かいにあるカフェのテラス席で、様子を伺うこととなった。暦の上では既に冬となり、ドルセード程ではないが肌寒い。メイトーから受け取った荷物の中には薄手のケープが入っていたので、二人はそれを着て張り込みを行った。
 のんきにパンケーキを頬張りながら、ピアノ商会を見張る二人。
 午前中は全く人の出入りはなかったが、正午を過ぎてから、人が出入りするようになった。そして、日が大分傾いてきたころ、ニタ達が探し求める人物がピアノ商会から出て来た。金髪のオールバックで服装は何の変哲もないアッチェレの男性の服装の一人の男性。
「マシアスだ!」
「きっと別人だよ。」
 そもそもポルカで出会ったマシアスは、砂漠の国の民の衣装を身に纏っており、露出が異常に少なかった。頭はターバンで覆われて、髪の色も分からなかったし、顔も山賊退治の時は布で隠されていたので、表情も良く分からなかった。クグレックとニタの中に残るマシアスの印象は冷たい水色の瞳だったが、それだけでは個人を特定するのは難しい。
 マシアスと思しき人物がどこへ行くのか、と二人は見張る。彼は道路を横断し、こちらに向かってくる。二人は表情を強張らせた。
 マシアスの影がニタとクグレックに重なる。
「何をしてるんだ。お前たち。」
 まさに声もマシアスそのものだった。
 逆光で表情は良く分からないが、水色の瞳が二人を見下ろす。
「やっぱり、お前はマシアス!」
 ニタが指を指して叫んだ。マシアスは少し焦った様子でニタの口を自分の手で押さえつけた。
「騒ぐな。静かにしろ。」
 ニタは口をふさがれてもなお、何かしら喚いてる。
「一体、どうしてこんなところにいるんですか?」
 ニタがもごもご言っているのを無視してクグレックが尋ねる。マシアスは口を押えられて暴れるニタをいなしながら、
「その言葉、そっくりそのまま返したいよ。お前たちのせいで、ちょっと困った状態にあるんだ。悪いようにはしないから、ちょっと来てくれないか?」
と、答えた。
「来てくれないか、って、どこへ?」
 クグレックの問いに、マシアスはちらりとピアノ商会に顔を向ける。そして、すぐにニタをいなす。
「…それって、どういうことですか?」
「詳しいことは、後で。とにかく、お前たちの安全だけは絶対に約束するから。」
 そう言いながら、マシアスはニタの首根っこに手刀を入れると、ニタは一瞬にしてぐったりと大人しくなった。
 クグレックはびっくりして口に手を当て、悲鳴が出そうになるのを我慢した。そんなクグレックがびっくりしている間に、マシアスはカフェの会計を済ませ、右手でニタを担いでピアノ商会に向かう。
 クグレックは、魔法で応戦しようと杖を取ろうとしたが、その手は宙を掴んだ。きょろきょろと辺りを見回すと、目の前のマシアスの左手にはクグレックの杖が握られていた。あの樫の杖はクグレックの祖母から譲り受けた形見でもある。
 クグレックが顔を真っ青にして立ち尽くしていると、マシアスは振り返り、
「だから、悪いようにはしない。お前のお友達を連れて行かれたくないのならば、ついて来い。」
と言って、左手の杖を掲げた。
(何が悪いようにしない、だ。ニタをあんな目に遭わせた挙句、私の杖を奪うなんて!確かにマシアスはニタの言う通り希少種ハンターの仲間だった!)
 とクグレックは心の中で怒るのだが、ニタと形見の杖を人質に取られては何もできない。クグレックはマシアスの背中を睨み付けながら、後を着いて行った。
 2015_10_29



 クグレックとニタはリタルダンド共和国の首都アッチェレに到着した。ポルカの村を降りた麓の村から、首都までの定期馬車が出ていたので、それに乗り、1週間かけてやってきた。都会の風景は、クグレックに地面を見る隙を与えない。隙間なく煉瓦造りのアパートメントが立ち並ぶ。
 建築途中の建物がちらほら見受けられるが、比較的新しいレンガ造りの建物が多く立ち並ぶこの都市は、かつての政変が非常に過酷な状況であったことと、その後の統治者による復興が良く進められていることを表していた。
 また、建物だけでなく道も綺麗に整備されている。綺麗に石畳が並べられた道路の傍には花壇が作られ、葉牡丹と葉がわずかにしか残っていない枯れた街路樹が植えられていた。
 のんびりとアッチェレ市街地を歩いていた二人だったが、次第に日が傾いて薄暗くなり、街灯にも灯りがつけられていくようになった。
 そろそろ休む場所を確保しなければならないので、宿屋を探して道を歩いていると、ふとニタが「あ」と声を上げた。宿屋の看板を探して辺りをきょろきょろ見回していたクグレックはその声に立ち止り、ニタを見た。
 ニタは白いふかふかの毛を全身逆立たせ、通りの向こうの人物を見つめていた。
 時刻は黄昏時。向こうの通りは未だ街灯が点いていないので、クグレックにはどんな人物なのか判別できなかった。男性が二人歩いていることしか分からなかった。
 ニタは身体能力が高い。おそらく、その視力も人間以上のものを持つのだろう。
 クグレックはどうしたのか、ニタに尋ねてみた。
「一体どうしたの?」
「ククは分からないの?」
 ニタが信じられないというような口調で言った。
「あいつら、ニルヴァを狙った山賊のボスと…」
「え、警察に捕まって、裁判にかけられたんじゃなかったの?」
 ニタはクグレックの問いを無視して、目をこすってもう一度通り向こうの男性を見た。
「そんなことより、もう一人は、マシアスだよ。どういうこと?」
「え、マシアスさん?」
 クグレックも驚いて、目を細めながら通り向こうの男達を見た。
 確かに一人は筋骨隆々で浅黒い肌をしている。山賊のボスと言われれば、確かにそうである。
 だが、その傍の同じくらいの身長のオールバックの金髪の男性はクグレックは見たことがない。ニタ曰く、彼がマシアスだということになるのだが。
「あの水色の目。ニタは覚えている。」
 こんな距離からでも識別できてしまうニタの視力に驚きながらも、クグレックはその言葉を信じ切れずにいた。何故ならマシアスはポルカで共に山賊退治をした仲間なのだ。そんな人物が、なぜ敵であった山賊のボスと一緒にいるのか。
「ニタ、ニタの目が良いことは凄いと思う。でも、マシアスさんは味方だよ。なんで山賊のボスなんかと一緒に居るの?それに、水色の目を持った人なんて沢山いるじゃない。」
 クグレックの故郷であるマルトの住民は鳶色の瞳の人が多かったが、その国の首都から来る偉い役人や騎士は青い瞳の者が多かったことをクグレックは覚えていた。
「いや、あいつはマシアスだ。きっと。ちょっと後を追ってみよう。」
「えぇ、やめようよ。」
 クグレックの静止も聞かずに、ニタは二人の追跡を開始する。クグレックは仕方なくニタの後を着いて行った。クグレックはそろそろお腹もすいて来たし、足も疲れて来たので休みたかったが、言葉には出さなかった。
 しばらくつけていくと、男二人は大きな煉瓦造りのアパートメントに入って行った。正面にドアが付いた形の3階建てのアパートメントだった。ドア上部には「ピアノ商会」と書かれた真鍮の表札が掲げられていた。
「ここは商業事務所みたいだね。」
 クグレックが言った。辺りには闇が迫っているが、街灯の灯りが点いていたので、クグレックでも『ピアノ商会』は認識することが出来た。
「うん。きっと、希少種ハンターのアジトだ。そもそもマシアスはグルだったんだ。マシアスはポルカの村から仕入れた情報を仲間の希少種ハンターに流してた。おかしいと思ったんだ。なんでニルヴァ防衛班はククを含めた4人だけだったのかって。防衛班にニタが行ったって良かったはず。アイツ一人でも山賊の8人くらい相手に出来たはずなのに。防衛班を手薄にして、残りの山賊に狙わせたのもマシアスだったんだって、ニタは思ってるよ。」
「そんな。マシアスさんは私達を助けてくれたじゃない。山賊のボスにとどめを刺したのはマシアスさんだよ。なにより、マシアスさんだって、私のせいで怪我を負ってるんだよ。きっとあの人はマシアスさんに似た別の人だよ。」
「いや、絶対マシアスだ。」
 ニタは全く折れる様子はない。ニタの頑固さにクグレックは呆れながら、ため息を吐いた。
「もう、じゃぁ、マシアスさんってことにしていいから、早く宿屋を見つけてご飯でも食べよう。」
「いや、これから突入する!」
 ニタはクグレックの話を聞かずに、ドアの取っ手に手をかけガチャガチャさせた。
 クグレックはため息を吐いた。
 そして、手に持っていた杖を構えると「ラーニャ・レイリア」と唱えると、ニタはそのままの格好でドアから遠ざけられた。クグレックは物体移動の魔法を使ったのだ。
「ちょっと、クク!ニタは希少種ハンターのアジトをぶっ潰さないといけないの!魔法を解いてよ!」
 ニタは手足をバタバタさせながらクグレックの魔法に抵抗する。
「…ここがアジトって分かったなら、明日でも良いと思う。今日は諦めて、ご飯食べて休んでからにしようよ。」
「嫌だ!」
 クグレックの魔法のため動けないニタは、まるで子供のようにその場で地団太を踏んだ。が、ふとした瞬間にそのふかふかした白くて丸いお腹から「ぐううう」と大きな唸りが発せられると、ニタは瞬時に大人しくなった。
「ククの言う通りだ。お腹空いたし、早く宿を探そう。」
「うん。」
 クグレックはにっこりと微笑んだ。

 2015_10_26


 即興小説トレーニングより。

 お題
 『部屋とYシャツと不動産』(15分)




 同棲解消。
 二人で部屋を借りた時は、書面上では夫婦になって、なんだかむず痒い思いがした。
 いつかは本当の夫婦になれるのかな、なんて、少しだけわくわくした。
 結局、孤蝶の夢にしか過ぎなかったけど。
 少しだけ夢見たあの瞬間。もう私達はそれぞれの道を行く。
 私はいつの間にか彼のお母さんになっていた。彼と同じくらい仕事で疲れていたけど、ご飯を作って、掃除をして、洗濯物を取り込んで。大好きな彼のためならば、と思って頑張って来たけど、彼は、私よりも若くて可愛い女の子を選んだ。家政婦みたいな私なんかよりも、若くて可愛い女の子の方が良いものね。うん。分かる。普通に分かる。
 段ボール箱に私の物を詰め込みながら、室内物干しに一枚だけかかっている彼のワイシャツが目に入った。あなたのために、一生懸命アイロンをかけてあげていたけど、一体なんだったんだろうな。私は彼の、何のためにアイロンをかけていたんだろう。
 
 彼の荷物を段ボールにまとめるのは私。
 なんたって、彼の家政婦ですもの。
 
 私は、ガムテープで封された彼の荷物が入った段ボールを開けて、しわになるであろうことも気にせずに彼の真っ白なワイシャツをぐじゃぐじゃにして詰め込んだ。

 了
 2015_10_07

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