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 クグレックは暑さと眩しさで目を覚ました。あまりにも眩しいので目を開けることが出来ない。
 頬には粒粒とした何かが当たって痛い。それよりもなにより暑い。
 気持ちを奮い立たせて、クグレックは目を開ける。
 そして、瞳に飛び込んできた情景にクグレックは一気に覚醒し、飛び起きた。
 光あふれる眩しい褐色の風景。太陽が痛いほどに照り付ける砂の景色なのだ。
 エネルギー高炉にいたはずなのに、エネルギー高炉の面影は全くなかった。建物すら存在しない、ただひたすら広大に続く砂漠の景色が広がっていたのだ。
 クグレックは口の中に砂入った砂を吐き出した。
 ディレィッシュに会ったことも、ニタやハーミッシュに再会したことも、夢だったのか分からない。
 ところが、辺りを見回してみると、ふかふかの毛を持った白いぬいぐるみが倒れている。クグレックはニタの傍に駆け寄り、声をかけた。
「ニタ、ニタ、起きて、大変。」
 そう言いながら、ニタの身体をゆすると、ニタは「ううん」とくぐもった声を出しながら目を覚ました。
「なに、クク…。あ。」
 ニタも周りの様子に気が付くと、それはそれはコミカルに飛び起きた。
「エネルギー高炉は?爆発しちゃった?」
「でも、瓦礫も何も残ってないし、ディレィッシュもマシアスもいない。」
「こんな砂漠のど真ん中に取り残されるなんて…。ニタ達、干からびて死んじゃうよぅ。」
 そのニタの言葉を聞いて、クグレックはぞっとした。
 永久に閉じ込められていたかもしれない暗闇の空間から脱出できたかと思いきや、今度は太陽の光が燦々と降り注ぐ砂漠のど真ん中に残された。一難去ってまた一難。
 二人で絶望に打ちひしがれていると、遠くの方からブオーンと低音が響いて来る。
 音のする方に目を遣れば、デンキジドウシャが近付いて来るようだった。
「デンキジドウシャ?…にしてはうるさいし、形が変。」
 デンキジドウシャはクグレックたちの元に止まった。
 このデンキジドウシャは少し大きくてゴツゴツしている。いままで見て来たデンキジドウシャは流線型のスタイリッシュな外見をしていたが、目の前に停まったデンキジドウシャは箱型でごつい印象をうけた。しかもよく見ると、浮いておらず、タイヤが付いた四輪駆動型だった。
 デンキジドウシャからは荷物を背負ったディレィッシュが降りて来た。
 ニタとクグレックは表情を強張らせて、目の前のトリコ王を警戒する。
「ふふふ、すまない。大丈夫だ。何もしない。いや、もう、何も出来ない。」
 ディレィッシュはにっこりと微笑んだ。
「二人には色々迷惑をかけてしまって悪かった。だけど、時間がないんだ。車に乗ってくれ。」
 ニタとクグレックは顔を見合わせる。目の前のディレィッシュは本当に信頼に値する人物なのか信じ切れなかった。
 二人が猜疑心に包まれていると、デンキジドウシャからまた別の誰かが降りて来た。マシアスだ。
「大丈夫だ。本物のディレィッシュだから、大丈夫だ。」
 と、マシアスに言われて、ニタとクグレックはようやく安心することが出来たのだろう、素直にデンキジドウシャに乗り込んだ。
 二人が乗り込んだのを確認して、ディレィッシュとマシアスもデンキジドウシャに乗り込んだ。
 運転席にはイスカリオッシュがおり、バックミラー越しに二人に声をかけてきた。
「…二人とも、無事で何よりでした。では、出発しますね。」
 助手席にマシアス、後部座席にはニタとククとディレィッシュを乗せ、デンキジドウシャは発進した。ブオオンというエンジン音と共にデンキジドウシャは進んで行く。耳障りではないが、少々気になる音だった。
「旧式のクルマか。」
 ディレィッシュが言った。
「えぇ。そうなりますね。そういう世界なので仕方がないです。燃費も悪いし、エンジン音も騒々しい。まぁ、日没までには国境に辿り着くと思いますけど。」
 イスカリオッシュが答えた。
「シートも堅いし、あまり長く乗り続けると疲れるな。」
「ふふふ、そうですね。」
 イスカリオッシュは微笑みながら答える。
 クグレックはイスカリオッシュと談笑するディレィッシュをじっと見つめた。魔のディレィッシュなのか、本物のディレィッシュなのか分からなかったからだ。
 そんなクグレックの不安な視線にディレィッシュは気付き、クグレックに向かってにこりと微笑んだ。クグレックは思わず
「本物?」
 と呟いた。
「あぁ。おかげさまで、取り戻せた。トリコ王国も、“私”も。」
「…。」
 クグレックは、まるで夢でも見ているかのような心地になってしまい、言葉を発することが出来なかった。ディレィッシュがこの現実の世界に存在するのだ。闇に取り込まれて、もう二度と会えないのではないかと怖くなっていたが、そうではなかった。再び会うことが出来た。
「でも、申し訳ないな。トリコ王国に永住の件は亡くなってしまった。」
「…」
 クグレックはもともとトリコ王国に長居はするつもりはなかったので、別に謝らなくても良いのに、と心の中で思った。
 だが、ディレィッシュがあえてそんなことを言うのは、結局戦争は止められず、どうにもならないからこの夢の様なトリコ王国では過ごせないということなのか。
「…私は、生きて戻って来ることが出来たのだが、…だが、この世界にはいない存在なのだ。」
「どういうこと?」
 ニタとクグレックは首を傾げた。
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