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 瘴気が濃くなる御山を一行は再び登り始めた。
 
 足場はだんだん悪くなる。これまでは整備された登山道だったが、洞窟を抜けてからはごろごろとした岩場が続く不安定な道だった。気を抜けばクグレックみたいな鈍臭い人間は転んでしまうだろう。さらに足場の悪さは体力も奪うのだ。大した距離を進んでいないのに、クグレックは足が痛くなってきた。
 その上、魔物も出現する。猿の様なすばしっこい魔物だった。岩場を巧みに駆け回り、ティア、やハッシュを翻弄する。ニタはかろうじて岩場を俊敏に動けるが、魔物ほどではないので、追いつけなかった。クグレックとディレィッシュは後方待機で荷物番だ。
「もう、なんなの、すばしっこいわね!」
「ここじゃ動きづらいな。」
 立ち往生するティアとハッシュ。ニタに追いかけられながら魔物は、石を拾っては投げつけて来る。ニタは済んでのところで石を交わしたり、キャッチしたりて相手の攻撃を回避する。
 すると、荷物番をしていたディレィッシュがおもむろに鞄の中を漁り、長さ30センチほどのケースを取り出した。中から何本か棒を取り出して、手慣れた手つきで組み立て始める。次第に形付くられるそれはボウガンの形をしていた。が、普通のボウガンよりも一回りほど小さく、子どもでも取り扱えそうなくらい可愛らしいサイズだった。
「ディレィッシュ、それ、何?」
 クグレックが尋ねる。
「ん、ボウガンだ。持ち運びに楽なように、分解可能で軽量、小型化してみた武器だ。殺傷力はあんまり高くないが、昨日、手入れをしてまぁ、いい感じだったので、実践投入してみようと思って。」
「ディッシュが作ったの?」
「まぁな。おもちゃみたいなもんだけど。」
 鉛筆程の矢をボウガンに込め、ディレィッシュは片手で小型ボウガンを構え、魔物に照準を合わせる。
「射撃は得意でね。銃器を扱う方が得意なんだが、あの武器は今の世界じゃ物騒だ。」
 余裕の笑みを浮かべながら、ディレィッシュがボウガンの引金をひくと、小さな矢は魔物に真っ直ぐに飛んで行きぷすっと刺さった。
 魔物は不意打ちの攻撃に驚き、動きが鈍った。その隙を着いて後を追っていたニタが魔物に回し蹴りを喰らわせ、魔物は霞となって掻き消えた。
「クク、なんか魔法使った?」
 ニタが不思議そうに尋ねた。クグレックは魔力温存のため、緊急時以外は魔法を使わないことになっている。
 クグレックは首を横に振った。
「私じゃない。ディッシュがやったの。ボウガンで。」
 と、クグレックが言うと、ディレィッシュは小さなボウガンを揚々と掲げた。
「ニタ、落ちた矢は回収してくるとありがたい。」
「分かった。」
 ニタはボウガンの矢を拾い、ディレィッシュの元へ運んだ。
「格好良い武器だね。」
「ニタの鉄拳に比べれば、おもちゃみたいなもんさ。」
 そう言って、ディレィッシュは小型ボウガンを解体する。
「あれ、もうしまっちゃうの?」
「あぁ、山登りに持ち歩くのは邪魔だからな。」
「そう。」
 そして、再び一行は岩場を進み続ける。確かに不安定な足場で、小型とはいえボウガンを持って歩くのはバランスもとりづらく大変であった。
 その後もたびたび魔物は出現したが、なんとか追い払うことは出来た。が、先程の猿の様な魔物のように素早かったり、特殊な攻撃を行ってくる魔物が多かった。強い魔物というわけでもないが、足場が足場なだけに戦い辛く、前衛隊の体力は順調に削られていった。
 が、瘴気が一層濃くなって、魔物も一度に4,5体ほど現れるので前衛隊の骨を折った。
「ティア、魔物が、どんどん増えてるけど、魔物スポットはどこにあるの?」
「この近くにあると思ったんだけど…。うーん。」
 ティアは一旦立ち止り、腕を組んで、目を閉じた。眉間に皺を寄せ、うーんと唸りながら考え込む。そして、開眼した。
「大変。魔物スポットは頂上にあるわ!」
 とティアは声を上げた。
「なんでわかるんだ?」
 ディレィッシュが尋ねた。
「えっと、ほら、悪魔祓いの師匠のせいで、魔に関して敏感になっちゃったから、魔物スポットも感覚でどこにあるかわかっちゃうのよ。」
「へぇ。」
「まぁ、そんなことはどうだっていいの。狂暴なドラゴンと一緒に魔物スポットがあるなんて、厄介すぎるわ。ドラゴンだけでなく魔物も一緒に相手にしないといけないなんて。」
「ふむ、それは厄介だな。」
「でも、行くしかないんでしょ。」
 ニタが問うと、ティアはこくりと頷いた。
「えぇ。魔物も思っていたよりも強いわけではないし、ニタもハッシュも強いわ。隠し玉のクグレックもいるから、勝算はある。ディレィッシュ、アンタにも特別な役割があるから、頑張って!」
「ほう、特別な役割か。」
 一行は気合を入れ直し、頂上へ向かう。頂上へ向かうにつれ、次第に見かけなくなっていた植物たちがちらほら姿を現したかと思うと、樹林帯が広がるようになった。そろそろこの標高では植物も育たなくなる高さだが、草花樹木共々立派に育っている。さらに、どこからか聞こえる動物たちの声。これまで岩や砂利といった殺風景だった景色が、急に生気を持ち始めた。
「山頂はもうちょっとよ…。」
 ティアは周りの景色を見て、そう言った。
 御山が霊峰たる所以はここにある。山頂周辺の神性だ。
 通常の標高では、御山の山頂は森林限界に当たり、樹木が育たない。だが、不思議なことに山頂付近に限り、御山では樹木が低地と同じように育っているのだ。さらに、今現在の季節は冬に当たるのだが、御山では雪が降らない。故に年中いつでも登ることが可能なのだ。
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