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マシアスとピアノ商会③


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 クグレックは暗い部屋で一人、後悔していた。
 マシアスにピアノ商会に連れて来られ、クグレックは1階にある木箱が沢山積まれた小さな部屋に案内された。「ここで少し大人しくしていてくれ。」と言われて、マシアスに外から鍵をかけられ、まんまと閉じ込められたのだった。
 ニタと杖はマシアスの元にあるので、クグレックは何も出来ない。最初からニタの言うことを信じて、マシアスに対してもっと警戒心を持つべきだった、と悔やむしかなかった。
 もしここがニタの言う通り、希少種ハンターのアジトだとするならば、既に絶滅したとされる希少種であるニタの身が非常に危険である。クグレックは何としてでもこの部屋から出たいと思うが、杖を奪われては成す統べもない。杖がなくても魔法は使えることは使えるが、いつもの効果を発しない。
 クグレックは掌を天に掲げて「イエニス・レニート・ランテン・ランタン」と呪文を唱えてみた。クグレックの手のひらで蝋燭の炎くらいに小さな炎が灯される。杖がなければこんなにも効果が弱くなる。
 ただ、こんな小さな炎でも灯りの無い真っ暗な部屋では周囲を照らす光となった。木箱しかないのは知っていたが、その箱の中に何か杖の代わりになる物はないか探してみることにした。片手で木箱の封を開け、箱の蓋を開ける。片手では持ち上がりそうもなかったので、いったん火を消して両手で蓋を開ける。そして、再び小さな火を魔法で出して、木箱の中身を照らした。
 箱の中には缶詰が沢山入っていた。魚や肉、スープなどの缶詰である。非常食として利用しているのだろうか。ここはピアノ商会という場所だから、取り寄せた商品かもしれない。クグレックは別の木箱も確認してみた。すると、別の木箱には衣服が沢山入っていた。全て男性物の衣服だ。さらに別の木箱を開けてみると、その中には武器が沢山入っていた。主にサーベル型の剣が入っている。また、その剣を運ぶためのベルトも沢山入っていた。
 あいにく剣は杖の代わりにはならない。クグレックは別の木箱を漁ってみたが、杖の代わりになる様な物は見つからなかった。
 他にも兜や防具といったものが木箱の中に大量に入っており、小部屋は積んであったものを降ろした木箱で一杯になっていた。
 クグレックは呆然と立ち尽くした。
 こうしている間にも、無抵抗のニタをマシアス達が虐げているかもしれない。
 そう考えると、クグレックはいてもたってもいられない気持ちになったが、杖もない魔女はただの女の子。今のクグレックにはどうする術もない。
 クグレックはヘタリとその場に座り込み、祖母の形見のペンダントをローブの下から取り出した。革紐の先には黒瑪瑙が結ばれている。吸い込まれるような漆黒に輝く石。クグレックはこの石のすべすべした手触りが好きだった。
 このペンダントは魔除けのお守りだと祖母が言っていた。だが、お守りなんて所詮はお守り。お守りがクグレックを守ってくれることはないだろうと思っていた。むしろ守ってほしいのはクグレック自身よりもニタだった。
 クグレックは黒瑪瑙をぎゅっと握りしめ、ただひたすらにニタの無事を祈った。
 その時、クグレックはふと何かを思いつき、再び小さな炎を掌に灯し、木箱を漁り始めた。サーベルが入っていた木箱から、サーベルを一本取り出し、その鞘から白銀に光る刀身を剥き出した。クグレックには剣は重たかったので、片手で持つことは出来なかった。炎を消し、両手で剣を握り、おもむろに木箱の蓋に刃先を叩きつける。ガン、ガンと何度も叩きつけるうちに蓋は割れた。更に叩きつけ、クグレックは木箱の蓋を破壊する。そして木箱はただのバラバラの木片と成り果てた。
 クグレックは「ふう」とため息を吐き、剣を鞘に戻して元の木箱にしまうと、額から伝い落ちてくる汗を拭った。
 再び掌に小さな炎を灯し、バラバラの木片を照らす。太すぎず、細すぎず、小さすぎず、大きすぎず、短すぎない木片を吟味すると、クグレックはそれを手に取った。何度か素振りをしてみて、彼女的にしっくり来たので、クグレックは扉に向かって杖を向けた。
 左手のひらの炎を消し、クグレックは木片に力を込め、集中する。
「アディマ・デプクト・バッキアム」
 と、クグレックは呪文を唱えると、木片の先から靄のような白い光が発せられ、扉に向かってゆっくりと浮遊して行った。
 光は扉をすり抜けていった。
 何の反応も起きず、クグレックは失敗したのかとがっくりとしたが、5分後くらいににカチャリと錠前が回る音が聞こえた。
「出来た。」
 クグレックは思わず小さく声を上げた。鍵開けの魔法が成功したのだ。杖の代わりのただの木片を媒介にしての魔法だったので、鍵開けの効果が出るまでには少し時間がかかってしまったが。以前もスプーンの柄を媒介にして魔法を使ったことがある。
 鍵開けの魔法はクグレックはあまり使ったことがなかった。祖母の部屋にあった魔導書を読んで鍵開けの魔法を覚え、鍵開けの魔法を使ったが、祖母にばれてしまった。それ以降祖母がクグレックから隠したい物に関しては、全て鍵開けの対抗魔法がかかってしまい、クグレックの鍵開け魔法は効果を発揮することはなくなってしまった。
 クグレックは、ちょうどいい大きさの木片を持ち出し、ゆっくりと扉を開けた。廊下には既に灯りが灯されており、数時間ぶりの光はクグレックにとって少しだけ眩しかった。
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 2015_11_01

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