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マシアスとピアノ商会⑦



 3階へ上がると、2階と同様廊下が続いていた。ドアは一つしかないがクグレックはボスはもっと奥にいるような気がした。扉を無視し廊下の奥へ進む。が、扉からは筋骨隆々で浅黒い肌をした男――ポルカで警察に突き出されたはずの山賊のリーダーが現れた。
「ラーニャ・レイリア!」
 クグレックはすぐさま物体移動の魔法を放ち、残族のリーダーを部屋に押し戻した。
 樫の杖が戻ってクグレックの魔法は絶好調だ。
 どん、と壁か何かにぶつかって、「ぐえ」とくぐもった声が部屋から聞こえてきたが、クグレックは無視した。そんなことよりもニタが心配だった。
 廊下を突き当りまで進んで行くと、右手側にも廊下が続いていた。その先にある扉は既に解放されており、杖を取り戻して無敵な気持ちでいるクグレックはそのまま部屋へ突入した。
「ニタ!」
 その部屋はなんとも悪趣味な部屋だった。壁は全て金で覆われていた。床は白いふかふかとした絨毯というよりかは何か巨大な動物の毛皮が敷かれている。壁際にはまるで生きているかのような姿の動物の剥製。雉の様な大きな鳥や狸、獅子といった動物だ。棚にはウサギの様な小動物が並べられていた。また、壁には武器庫で見た筒状のL字型の武器が飾られている。武器庫で見たものよりも、少々大きくて長く見えた。
 そして、部屋の中にいたのは金色のシルクハットをかぶり、金色のスーツを身に纏った狸顔の大きな男だった。でっぷりとして顔は脂ぎっており、金色のスーツがはちきれんばかりの体をしていた。
「やぁ、魔女のお嬢さん。ペポならそこでゆっくりと休んでいるよ。」
 ニタは金の机の上にある鉄の檻の中ですやすや眠っていた。まだ目が覚めていないようだ。鉄の檻はニタの身長の半分ほどの高さだった。1階の部屋にあった木の箱と同じくらいの大きさだった。
「可愛いねぇ。魔女のお嬢さん、このペポの子をお嬢さんに返すから、私からのお願いを聞いてくれないかな?」
 比較的優しい声で狸顔の男はクグレックに言った。男の指にはぎらぎらとした色とりどりの指輪が嵌められている。
「マシアスと呼ばれる男を殺してくれないかな。」
「殺す?」
「お嬢さん、そんな怖い顔をしないで。」
「マシアスは貴方たちの仲間じゃないんですか?」
「…いや、彼はちょっとやり過ぎたんだよ。そうだね、うん、マシアスはハンティングした希少種を高値で売りさばいてくれていたんだけど、そのうちのいくらかを横領していたんだよ。そしてその金を何に使っていたかというと、人外排出運動を行う団体に貢いでいたんだ。ピアノ商会は確かに希少種をハンティングしていたけれども、人外排出団体のように絶滅まで追い込むことはしない。私達の理念に反するんだよ。ハンティングはあくまでスポーツだ。一つの命に対して敬意を持って接するんだ。だから、絶滅に追い込むなんて野蛮な真似は出来ない。」
 優しい口調で語る狸顔の男。
 しかし、クグレックにはハンティングの崇高な理念は理解できなかった。ピアノ商会も人外排出団体も同じものだと感じていた。結局両方とも命を奪うのだから、同じことだ。
「だけど、それをやってしまう輩と関係を持っていたのがあのマシアスという男だ。私は彼を許せない。それに、私は絶滅したはずのペポを見て、思ったんだ。希少種、希少種でないからという理由で価値をつけるハンティングなどもうやめようと。こうやって一人生き残ったペポはどれほど辛い思いをしたのか。それを考えると、心が締め付けられるように苦しくなってね。もうこんな悲しいことはやめようと思ったよ。」
 希少種ハンターのボスは意外と良い人なのか、とクグレックは思い始めて来た。
「希少種ハンティングはもうやめるよ。私達は、全うに働いて、世間のために生きていこう。だから、魔女のお嬢さん、マシアスを殺してくれ。」
「それは…、私には出来ません…。でも、ニタを返してください。もしかすると、ニタならマシアスを懲らしめてくれるとおもいます。殺しはしませんが…。」
 狸顔の男はにっこりと微笑んだ。
「ふむ、じゃぁ、懲らしめる程度なら、魔女のお嬢さんには出来ないかな?懲らしめて、連れて来てくれればいいんだ。」
「…」
 クグレックは俯いた。魔法の力で誰かを傷つけてしまうことは、それこそ魔女の血が穢れてしまう行為だと思うからだ。クグレックは魔女であるが、忌み嫌われるべきは魔女の血であり、クグレック自身ではない。誰かを傷つけてしまったら、忌み嫌われても、もう言い訳をすることは出来ない。その行為は魔女の血をもつクグレック自身の行為になるのだから。
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 2015_11_07

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