fc2ブログ


不老長寿の好きな人



 クルガは自身の嬉しい状況に困惑していた。
 朝、目が覚めて起きたら、マナがベッドに入り込んでいた。
 クルガが愛するマナは、すやすやと安心しきった寝息を立てて一緒のベッドに眠っているのだ。しかも、マナはクルガにぴっとりと密着している。
 クルガは混乱しながら、マナに声をかけた。
「マナ、ここ、俺のベッドだよ。」
「…うん、クルガ…。知ってる…。」
 どうしてここで寝ているのか、クルガには全く見当がつかなかったが、本日彼は食事当番だったため、マナはそのままにしてそっと部屋を出て行った。

「朝起きたら、マナが俺の布団に入って寝ていたんだ。ククだったらどう思う?」
「え、うーん、マナはクルガと一緒に寝たかったのかなぁ。」
「それって、俺のこと好きってことっすかね?」
「…確かに、好きな人とは一緒にいたいと思うけど…。」
 アルトフールの皆の朝食を作りながら、純朴なククとクルガは会話を交わす。
「でも、クルガ、布団の中に入って来たから自分のことが好きだなんて、ちょっと短絡的すぎるんじゃないかな。うぬぼれも良いところだよ。」
「だって、布団の中に入って来たんすよ?もしハッシュがククのベッドに入り込んで寝てたらどう思うっすか?」
「え、ちょっと引く。」
「なんでっすか?嬉しくないんっすか?」
「勝手に入って来られても、困るよ。涎とか垂らして寝てたら恥ずかしいもの。」
「むむ、確かに。」
「それに、クルガ、相手はマナだよ?マナのことだからどうせ突拍子もないことでクルガの布団に潜りこんでたに違いないよ。」
「そう言われてしまうとそうなんすけど。」
「きっと深い意味はないよ。あまり考えない方が良いよ。」
 ククに諭され、クルガは今朝の出来事に関しては深く考え無いようにしようと思ったが、どうしてもマナがいた時の温かみやドキドキ感が自然と思い出されて、やっぱり自分に気があるのではないかと考えてしまう。クルガは、雑念を振り払うかのように頭を振って目の前の野菜を切ることに集中した。

 しばらくすると、食堂はニタを初めとして朝ごはんを求める住人達で賑わって来た。
 ククとクルガはせっせと配膳を行う。
「マナ、どうして今日はクルガの部屋なんかいたの?」
 クルガの姉であるアリスがマナに尋ねる。二人は一緒に食堂にやって来て一緒の席で朝食を取っている。
 マナは味覚を感じることが出来ないが、黙々と朝食を口に運ぶ。彼女らしい独特の間を取った後、彼女はアリスの質問に答えた。
「クルガと寝たかった。」
 アリスはもぐもぐと口を動かしながら、黙ってマナの次の言葉を待つ。無表情であるが、内心驚いていた。
「クルガは温かいから。なんだか昨日は急に寒くなって目が覚めた。だから、クルガのところに行った。」
 淡々と語るマナはいつもの通りだ。
「マナ、クルガのこと好き?」
「うん。」
「その好きって、どういうもの?ククやアルティと同じ『好き』?」
「違う。」
 アリスは噎せた。マナの返答にびっくりして、呑みこもうと思っていた物が吹き出しそうになるのを抑えたら変なところに入って行ってしまったらしい。アリスは水を飲んで呼吸を整える。
「ううん。じゃぁ、ククがハッシュに思う気持ちと同じ?」
「…それは、分からない。私はククじゃない。でも、そうだったら幸せだと思う。」
 アリスは嬉しそうに、マナを見つめた。アリスはマナの片腕として、マナの面倒を見て来たが、その前に自身はマナの友人の一人であると信じて来た。マナがアリスのことをどう思っているかは知らないが、アリスは友人であるマナの心境の変化を微笑ましく感じた。彼女はマナのことをまるで人形のように感情がない人だと思っていたが、徐々に人間らしい優しい一面をみせるようになって来ている。
「そっか。ククと同じ気持だったらいいね。」
 マナは静かに頷いた。そして、再び黙々と食事を取り続ける。
 不老長寿のマナは心が壊れていたから、老うことがなくなったのだろう。機械のように、人形のように変わらずに居ただけだ。
 アルトフールで過ごすことによって、彼女は少しずつ愛を思い出し、少しずつ時間も動き出しつつあるらしい。

関連記事
スポンサーサイト




 2015_12_23

Comments


 管理者にだけ表示を許可する

04  « 2024_05 »  06

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

プロフィール

六星ぷれや

Author:六星ぷれや
FC2ブログへようこそ!

全記事表示リンク

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR


B
A
C
K

T
O

T
O
P