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魔女と砂漠の王国⑩


「この扉を開ければ、マシアスがいる。」
 二人の目の前に立ちはだかるのは、黄金や極彩色で美しい細密彫刻が施された豪華な扉だった。何よりも高貴で美しいのだ。この扉の向こうにトリコ王国を統べる血が流れる御人がいるのは当然であろう。
 ニタは取っ手を掴むとガチャガチャ引いたり押したりするが、開かない。例の如く鍵がかかっていることを確認すると、ニタはクグレックに目配せをする。
 クグレックは杖を握りしめ、鍵開けの魔法を使おうとしたが、ふと意識を戻した。
「ねぇ、ニタ。マシアスは今、体調が悪くて寝込んでるんだよね。なら、お見舞いの品の1つや二つ、持って来るべきだったんじゃないのかな。それに、体調が良くないのに勝手に部屋に入るのは迷惑じゃないのかな。」
と、クグレックが呟いた。
 ニタはパチパチと瞬きをして、あどけない表情でクグレックを見つめたが
「まぁ、そうなんだけど。でも、ニタは『今』マシアスに会わないといけないような気がするんだ。迷惑にならない程度にお邪魔しよう。」
と、言った。今クグレックが戻りたいと言ったところで、既に決断をしてしまったニタの意思を覆すことは難しい。マシアスには申し訳ないと思いながらも、クグレックは杖を握り直し、呪文を唱えようとした。
 しかし、その時だった。
「この扉を開けるな。」
 荘厳な扉の向こうから聞こえる怒鳴り声。
 クグレックは思わず詠唱を止めてしまった。びっくりしたのだ。
 なぜなら、その声は、二人が会いたがっていた彼の声だったからだ。
「マシアス、そこにいるんだね!ニタだよ!体の具合はどう?」
 ニタは嬉しそうに扉の向こうのマシアスに声をかける。
「…調子は、すこぶる良い。」
「そうか、なら良かったよ。」
 クグレックもほっと胸をなでおろした。扉越しでマシアスの声はくぐもって聞こえるが、元気そうであることに安心した。
「二人とも、トリコ王国はどうだ?」
「うん、まぁ、悪くはないね。科学の力は凄いよ。一生いるつもりはないけど。てゆーか、マシアス、なんで黙ってたの?ディレィッシュがトリコ王であること、マシアスが第1皇子だってこと。すごくびっくりしたよ。本当の名前はハーミッシュって言うんだね。」
「マシアスは偽名だ。自身がトリコ王家の人間であることがばれてはいけないからな。…びっくりさせて申し訳なかった。ただ、ディレィッシュ提案でサプライズ形式にしようとしたから、故意的なモノではあったが。」
「めっちゃびっくりしたんだからね。ククなんて、生まれたての小鹿みたいに震えてたんだから。」
 クグレックはトリコ王国に着いた当初に催された祝宴で無理やり着させられた露出の多い砂漠の国の伝統衣装のことを思い出した。今は侍女達が来ている衣装のようななるべく露出の少ない衣装にしてもらっているが、あの時の恥ずかしさはもう2度と味わいたくなかった。
「ははは。本当に田舎モンだな、クグレックは。」
 クグレックはムッとしたが、マシアスの言うことは事実なので、素直に受け入れて何も言い返さなかった。
「王は、どうだ?二人に失礼を働いてないか?」
 マシアスが二人に尋ねた。
「失礼って、あの人は王様じゃないの。…まぁ、変な人だなとは思ったけど。」
「魔法を知りたがってはいなかったか?」
「魔法?」
「あぁ、そうだ。」
「うん。ククもニタも、今は被検体になって、ディレィッシュの実験に協力してるよ。」
 すると、扉の向こうからマシアスの声は聞こえなくなった。
「どうしたの?マシアス。」
「もう、実験に協力してはいけない。」
「どういうこと?」
「…王は魔法によってより多くのエネルギーを生み出そうとしている。建前はより良い暮らしにするために、高エネルギー発生装置でも作ろうとしているだろう。だが、あの人の内心は違う。大量破壊兵器を作ろうとしているんだ。お前たちは王に多くの手がかりを与えてしまった。だから、兵器は完成してしまうかもしれない。だからこそ、これ以上のヒントを与えてはいけない。もう実験に協力してはいけない。」
「大量破壊兵器…?」
「王はプライベートラボにて兵器の開発を個人的に進めていた。だから、ランダムサンプリとの戦争の件も俺達が知らないうちに水面下で動いていたんだ。黒幕はピアノ商会でもない。王だった。このことに気付いていたら、お前たちを、トリコ王国に連れてくるべきではなかったし、お前たちのことを王に話すべきでもなかった。最後の詰めが甘かった。」
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 2016_05_31

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