ククと仲間達によるハッシュのハート奪還大作戦。
一生懸命アピールするもなかなか実らないククの小さな片思い。
引っ込み思案なククだけど、頑張って一肌脱がせていただきます。
お題をお借りしております→chocolate sea
一生懸命アピールするもなかなか実らないククの小さな片思い。
引っ込み思案なククだけど、頑張って一肌脱がせていただきます。
お題をお借りしております→chocolate sea
「クーちゃん、男性には上目遣いが効くんだってよ。」
柔らかな午後の陽射しが差し込むリビングで、私とニタはのんびり読書をしていた。私はハクアから借りた魔術書を読み、ニタは今月発売したばかりの女性雑誌を読んでいた。白くて大きなぬいぐるみのような風貌のニタがお洒落な女性雑誌を読んで何を吸収するのかは疑問だけど、世間の流行をキャッチすることも重要なことなのだろう。アルトフールにいると外部からの情報は、何もせずにいれば当然何も入ってこないので、自分で集めるしかない。
それにしても、上目遣いって。
上目遣いのどこがいいのか、読書を中断してちょっと考えてみる。
上目遣いと見上げている状態って、何が違うのだろう。
「ニタ、上目遣いが良くわからない。ちょっとやってみて。」
「分かった。ニタの上目遣いは可愛いよ。見てて。」
そう言って、ニタは私の前までてくてく歩いて来て、ちょこんと座った。そして、可愛らしい顔を決めて、私を下から見つめる。
なるほど…。
ニタのサファイアのような青のつぶらな瞳と、ふわふわした白い体毛に包まれたお顔は確かに「上目遣い」することによってより一層可愛らしく見える。ニタは強いので守る必要なんて全くないけれど、「上目遣い」であることにより、なんだか守ってあげたくなるし、食べ物をあげたくなるような感覚に陥る。ニタは可愛いけどもっと可愛い!モフモフしたい!
私は思わずニタを力いっぱい抱きしめた。
「うわわ、クーちゃん、どしたのさ。」
「『上目遣い』、凄いね、どういうことか分かった!なんだか凄くキュンとする。」
「ほほう、『上目遣い』の威力、分かっただろう?上目遣いをすることで可愛さが倍になるのだよ。」
確かに、ニタの可愛さは倍になった。
でも、ニタは元々愛玩動物的な可愛さがあるから、可愛く見えたけど、実際人間がやったところで可愛らしく見えるのだろうか。
私はソファから立ち上がり、床に直接座った。そして、ニタを見上げてみる。こんなんで可愛らしく見えるのだろうか。
「ふおおお、クーちゃん、クーちゃんの上目遣いも可愛いよ!雑誌にはね、目をうるうるさせてみたり、口をアヒルみたいにしたり、困った顔をしてみるのも良いって。」
「なにそれ、なんでそんなのが?」
「さぁ、ニタには唇がないからアヒル口は出来ないけど、困った顔ならできるよ。」
そう言って、ニタもしゃがみ、少しだけ困ったような表情で私のことを見上げて来た。
やはり、実際にやって見せられると分かる。ニタに困り顔で上目遣いをされると、なんだか申し訳ない気がしてきて、何かをしてあげたい気になる。
『上目遣い』って不思議。
と、そこへ、クルガが通りかかった。
他の男性陣には相談できないことも、クルガになら相談出来てしまうことも多いので、クルガにはニタに次いでお話を聞いてもらうことが多い。
「あ、クルガ、ねぇねぇ、」
と言って、床に座った状態で手招きしてクルガを呼ぶ。クルガは「ん、何?」と言って、ニコニコしながら近づいて来た。私は頑張って上目遣いを行う。ちょっとだけ困った顔をしながら、黙って見つめる。
クルガは不思議そうに首を傾げた。
「ククさん、どうしたの?なんか、あんまり見つめられると、ちょっと照れちゃうよ。」
「それはキュンとする感じ?」
「え、キュン?」
クルガは戸惑った様子だった。すかさずニタが
「今、クーちゃんは上目遣いの練習をしてたんだよ。男には上目遣いが効くっていうからね。効果が実証されたら、試してみよう、ということだったの。」
とフォローしてくれた。クルガはようやく合点が行ったようだった。
「なるほどね。上目遣いは確かに、キュンとするかもしれない。好きな人にやられたら。うん。それはよくわかる。」
一人でにやけながらうんうん頷くクルガ。多分、この子はマナのことを考えてる。
「でも、好きでもない人に上目遣いされたらどうなの?」
「うーん、今の件から言えば、ドキドキはするね。俺はマナ一筋だけど、ちょっとドキドキするかも。」
「そうなんだ。」
でも、確かに、ニタの上目遣いにキュンキュンしたのは、私がニタを好きだからなのかもしれない。じゃぁ、ハッシュが私に上目遣いしたら、私はキュンキュンするけど、その逆だったらハッシュはキュンとするのだろうか。うーん、キュンとしなくてもいいから、せめてドキドキはしてほしいな。
『上目遣い』は奥深い。
そんなわけで、私、頑張ります。
夜ご飯を食べた後、ハッシュの部屋にお邪魔してみました。ニタがシチュエーションを考えてくれたので、そのやり方でやっていこうと思います。
「ハッシュ、夜にお邪魔してごめんね。」
「ん、あぁ、別にテレビ見てただけだし、大丈夫だよ。一緒にテレビ見る?」
「ふぇ?」
まさかの向こうからのお誘い。まぁ、これはよくあることであって、残念ながら他意はない。ハッシュは一体私のことどんなふうに見てるんだろう。多分、一緒に旅をした仲間で以外には見えてないんだろうし、あまつさえ女としても見て貰えていないんだろうと考えながらも、ハッシュの隣でテレビを一緒に見る。タレントさんが肉体の限界を超えたゲームにチャレンジする番組らしい。脳筋と称されるハッシュが好きそうな番組だ。
こうやってハッシュと一緒にいられるのは嬉しい。距離が近いのは良かったと思うけど、なんか、違う。
まぁ、そうだ、ニタの作戦を実行させなくちゃ。
「あ、ハッシュ、あの、ジャムの蓋が開かなくて…。」
これぞ上目遣い!ニタとクルガとであの後練習したので、可愛くできてると思うんだけど…。
「ジャム?今からなんか食べるの?クク、太るぞ?」
ああ、もう、違うのに。この人はどうしてこんなに鈍感なの?
求めてたのはこんな反応じゃない。きっと、ハッシュはキュンもしてないし、ドキドキもしてない。
ハッシュは私の手からジャムを受け取ると、いとも容易くジャムの蓋を開けた。ニタの馬鹿力できつく締めたジャムの蓋はあっさり開いてしまった。
「おいしそうなイチゴジャムだな。明日の朝食がパンだったらちょっとくれよ。」
そう言いながら、ハッシュは私の手にジャムの瓶を戻す。
ハッシュの馬鹿。
本当に鈍感なんだから。
なんだか涙が出て来そう。
私なんて、女としても見てもらえないし、きっとその辺の男性たちと同じ扱いをされてるんだ。ハッシュはフィンが好きだから私が恋愛対象外なのも知ってるけど、ここまで望み薄だとは。やっぱりフィンの上目遣いじゃないとキュンとしないのかな。
まぁ、私なんかに魅力なんてあるはずがないんだ。
ハッシュがびっくりしたような表情で私を見てる。私は泣きそうな顔なんて見られたくなかったから、慌てて視線を逸らして、瓶の蓋を軽く締めて傍らに置き、そして近くにあったクッションに顔を埋めた。そして
「あー、瓶が開いて良かった。これで明日のお菓子の仕込みが出来るー!すっごく嬉しー!」とクッションに顔を埋めながら叫んだ。きっとハッシュの目にはジャムの蓋が開いて感激している私が写っていることだろう。
と、その時、ハッシュが私の頭を撫でて来た。
「そんなに開いて喜ぶほどのジャムならば、すっげー美味しいお菓子が出来るんだろうな。良かったな、クク。」
ハッシュはよく私の頭を撫でる。ハッシュに撫でられていると、ドキドキするけどなんだか安心する。その大きな手の温もりが私は好きだった。この手の温もりを確実に私のものに出来ればいいのに。
なんて無理かな。
そっとクッションから顔を離し、恐る恐るハッシュを見遣る。あ、今の私は『上目遣い』していた。
そんなハッシュは私のことを手のかかる子どもを見ているかのように、やれやれというような表情で見ていた。
「・・・お菓子作ったら、またハッシュにあげる。」
ハッシュは鼻で笑う。
「はいはい。いつもありがとうな。」
やっぱり私は子ども扱いされてるのかな。とりあえず、上目遣い作戦は失敗に終わったので、ハッシュの部屋から退散しよう。
クッションを脇に置いて、私はイチゴジャムの瓶を持って立ち上がった。
「蓋、開けてくれてありがとう。じゃぁね、おやすみ。」
「あぁ、じゃぁな、おやすみ。」
そうして私はハッシュの部屋を出ていった。
さて、明日はイチゴジャムを使ってお菓子を作ることになったけど、一体何を作ろうかな。
上目遣い作戦は失敗に終わってしまったけど、私はめげない!
お菓子の中に惚れ薬を混入させてみようかな、なんて思うけど、それはしない。自分の力で絶対振り向かせるのが私の目標。そのためなら、諦めない。頑張る。
柔らかな午後の陽射しが差し込むリビングで、私とニタはのんびり読書をしていた。私はハクアから借りた魔術書を読み、ニタは今月発売したばかりの女性雑誌を読んでいた。白くて大きなぬいぐるみのような風貌のニタがお洒落な女性雑誌を読んで何を吸収するのかは疑問だけど、世間の流行をキャッチすることも重要なことなのだろう。アルトフールにいると外部からの情報は、何もせずにいれば当然何も入ってこないので、自分で集めるしかない。
それにしても、上目遣いって。
上目遣いのどこがいいのか、読書を中断してちょっと考えてみる。
上目遣いと見上げている状態って、何が違うのだろう。
「ニタ、上目遣いが良くわからない。ちょっとやってみて。」
「分かった。ニタの上目遣いは可愛いよ。見てて。」
そう言って、ニタは私の前までてくてく歩いて来て、ちょこんと座った。そして、可愛らしい顔を決めて、私を下から見つめる。
なるほど…。
ニタのサファイアのような青のつぶらな瞳と、ふわふわした白い体毛に包まれたお顔は確かに「上目遣い」することによってより一層可愛らしく見える。ニタは強いので守る必要なんて全くないけれど、「上目遣い」であることにより、なんだか守ってあげたくなるし、食べ物をあげたくなるような感覚に陥る。ニタは可愛いけどもっと可愛い!モフモフしたい!
私は思わずニタを力いっぱい抱きしめた。
「うわわ、クーちゃん、どしたのさ。」
「『上目遣い』、凄いね、どういうことか分かった!なんだか凄くキュンとする。」
「ほほう、『上目遣い』の威力、分かっただろう?上目遣いをすることで可愛さが倍になるのだよ。」
確かに、ニタの可愛さは倍になった。
でも、ニタは元々愛玩動物的な可愛さがあるから、可愛く見えたけど、実際人間がやったところで可愛らしく見えるのだろうか。
私はソファから立ち上がり、床に直接座った。そして、ニタを見上げてみる。こんなんで可愛らしく見えるのだろうか。
「ふおおお、クーちゃん、クーちゃんの上目遣いも可愛いよ!雑誌にはね、目をうるうるさせてみたり、口をアヒルみたいにしたり、困った顔をしてみるのも良いって。」
「なにそれ、なんでそんなのが?」
「さぁ、ニタには唇がないからアヒル口は出来ないけど、困った顔ならできるよ。」
そう言って、ニタもしゃがみ、少しだけ困ったような表情で私のことを見上げて来た。
やはり、実際にやって見せられると分かる。ニタに困り顔で上目遣いをされると、なんだか申し訳ない気がしてきて、何かをしてあげたい気になる。
『上目遣い』って不思議。
と、そこへ、クルガが通りかかった。
他の男性陣には相談できないことも、クルガになら相談出来てしまうことも多いので、クルガにはニタに次いでお話を聞いてもらうことが多い。
「あ、クルガ、ねぇねぇ、」
と言って、床に座った状態で手招きしてクルガを呼ぶ。クルガは「ん、何?」と言って、ニコニコしながら近づいて来た。私は頑張って上目遣いを行う。ちょっとだけ困った顔をしながら、黙って見つめる。
クルガは不思議そうに首を傾げた。
「ククさん、どうしたの?なんか、あんまり見つめられると、ちょっと照れちゃうよ。」
「それはキュンとする感じ?」
「え、キュン?」
クルガは戸惑った様子だった。すかさずニタが
「今、クーちゃんは上目遣いの練習をしてたんだよ。男には上目遣いが効くっていうからね。効果が実証されたら、試してみよう、ということだったの。」
とフォローしてくれた。クルガはようやく合点が行ったようだった。
「なるほどね。上目遣いは確かに、キュンとするかもしれない。好きな人にやられたら。うん。それはよくわかる。」
一人でにやけながらうんうん頷くクルガ。多分、この子はマナのことを考えてる。
「でも、好きでもない人に上目遣いされたらどうなの?」
「うーん、今の件から言えば、ドキドキはするね。俺はマナ一筋だけど、ちょっとドキドキするかも。」
「そうなんだ。」
でも、確かに、ニタの上目遣いにキュンキュンしたのは、私がニタを好きだからなのかもしれない。じゃぁ、ハッシュが私に上目遣いしたら、私はキュンキュンするけど、その逆だったらハッシュはキュンとするのだろうか。うーん、キュンとしなくてもいいから、せめてドキドキはしてほしいな。
『上目遣い』は奥深い。
そんなわけで、私、頑張ります。
夜ご飯を食べた後、ハッシュの部屋にお邪魔してみました。ニタがシチュエーションを考えてくれたので、そのやり方でやっていこうと思います。
「ハッシュ、夜にお邪魔してごめんね。」
「ん、あぁ、別にテレビ見てただけだし、大丈夫だよ。一緒にテレビ見る?」
「ふぇ?」
まさかの向こうからのお誘い。まぁ、これはよくあることであって、残念ながら他意はない。ハッシュは一体私のことどんなふうに見てるんだろう。多分、一緒に旅をした仲間で以外には見えてないんだろうし、あまつさえ女としても見て貰えていないんだろうと考えながらも、ハッシュの隣でテレビを一緒に見る。タレントさんが肉体の限界を超えたゲームにチャレンジする番組らしい。脳筋と称されるハッシュが好きそうな番組だ。
こうやってハッシュと一緒にいられるのは嬉しい。距離が近いのは良かったと思うけど、なんか、違う。
まぁ、そうだ、ニタの作戦を実行させなくちゃ。
「あ、ハッシュ、あの、ジャムの蓋が開かなくて…。」
これぞ上目遣い!ニタとクルガとであの後練習したので、可愛くできてると思うんだけど…。
「ジャム?今からなんか食べるの?クク、太るぞ?」
ああ、もう、違うのに。この人はどうしてこんなに鈍感なの?
求めてたのはこんな反応じゃない。きっと、ハッシュはキュンもしてないし、ドキドキもしてない。
ハッシュは私の手からジャムを受け取ると、いとも容易くジャムの蓋を開けた。ニタの馬鹿力できつく締めたジャムの蓋はあっさり開いてしまった。
「おいしそうなイチゴジャムだな。明日の朝食がパンだったらちょっとくれよ。」
そう言いながら、ハッシュは私の手にジャムの瓶を戻す。
ハッシュの馬鹿。
本当に鈍感なんだから。
なんだか涙が出て来そう。
私なんて、女としても見てもらえないし、きっとその辺の男性たちと同じ扱いをされてるんだ。ハッシュはフィンが好きだから私が恋愛対象外なのも知ってるけど、ここまで望み薄だとは。やっぱりフィンの上目遣いじゃないとキュンとしないのかな。
まぁ、私なんかに魅力なんてあるはずがないんだ。
ハッシュがびっくりしたような表情で私を見てる。私は泣きそうな顔なんて見られたくなかったから、慌てて視線を逸らして、瓶の蓋を軽く締めて傍らに置き、そして近くにあったクッションに顔を埋めた。そして
「あー、瓶が開いて良かった。これで明日のお菓子の仕込みが出来るー!すっごく嬉しー!」とクッションに顔を埋めながら叫んだ。きっとハッシュの目にはジャムの蓋が開いて感激している私が写っていることだろう。
と、その時、ハッシュが私の頭を撫でて来た。
「そんなに開いて喜ぶほどのジャムならば、すっげー美味しいお菓子が出来るんだろうな。良かったな、クク。」
ハッシュはよく私の頭を撫でる。ハッシュに撫でられていると、ドキドキするけどなんだか安心する。その大きな手の温もりが私は好きだった。この手の温もりを確実に私のものに出来ればいいのに。
なんて無理かな。
そっとクッションから顔を離し、恐る恐るハッシュを見遣る。あ、今の私は『上目遣い』していた。
そんなハッシュは私のことを手のかかる子どもを見ているかのように、やれやれというような表情で見ていた。
「・・・お菓子作ったら、またハッシュにあげる。」
ハッシュは鼻で笑う。
「はいはい。いつもありがとうな。」
やっぱり私は子ども扱いされてるのかな。とりあえず、上目遣い作戦は失敗に終わったので、ハッシュの部屋から退散しよう。
クッションを脇に置いて、私はイチゴジャムの瓶を持って立ち上がった。
「蓋、開けてくれてありがとう。じゃぁね、おやすみ。」
「あぁ、じゃぁな、おやすみ。」
そうして私はハッシュの部屋を出ていった。
さて、明日はイチゴジャムを使ってお菓子を作ることになったけど、一体何を作ろうかな。
上目遣い作戦は失敗に終わってしまったけど、私はめげない!
お菓子の中に惚れ薬を混入させてみようかな、なんて思うけど、それはしない。自分の力で絶対振り向かせるのが私の目標。そのためなら、諦めない。頑張る。
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