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霊峰御山のドラゴン退治⑧



それから1時間ほどで、全員分の荷物を持ったティアがやって来た。クグレックたちの姿を見つけると泣きそうな表情で駆け寄り、荷物を全て降ろしてからニタとクグレックを抱きしめた。
「もう、起きたらみんないなくなってるんだもん!なんか周りはびしょびしょになってるし、ヤバい魔物に襲われたのかと思って心配したんだから!わーん!」
「ティア、ちょっと痛い。」
「痛いよう…」
 怪力の持ち主のティアに抱きしめられ、ニタとクグレックも低い声をあげる。。
 するとティアはハッとした様子で下した荷物を漁り始めた。荷物の中から小さな小瓶を取り出すと、瘴気酔い止めを一粒掌に取り出した。
「ニタ、そろそろ薬が切れる時間よね。まだ瘴気止めはあるから、飲むと良いわ。」
 ティアはそう言って、ニタに金平糖にも似た瘴気止めを一粒口の中に入れてあげた。
「それにしても一体なんでこんなことが起きたの?」
 再会の喜びも落ち着いたティアが、全員に向かって尋ねる。
 4人はお互いに目配せをしあった。正直なところ、昨晩の出来事に関して、彼ら自身も何があったかということは話せても、どうして起きたのか、ということまでは分からなかったからだ。
 とりあえず、ニタがこの顛末をティアに説明すると、ティアはちんぷんかんぷんな様子だった。
「全く!その女って一体何なのよ。」
 クグレックは彼女をどこかで見たことがあった。その声も聞いた覚えがあった。だが、いつ、どこで彼女に会ったのかがはっきりしない。 
「あぁ、そう言えば私は彼女の妹にあったぞ。私達を襲った彼女よりも大分若い女の子だったが、顔や姿かたちはそっくりだった。だから妹だと思う。私が見張りをしていた時に、彼女が突然現れたんだ。彼女はドラゴンは魔の力に囚われて、苦しんでいるから助けてあげて、そうすれば、アルトフールへ導いてくれるって言っていた。お姉さんだと思われる彼女ほど禍々しい様子は感じ取られなかったな。」
 と、ディレィッシュが軽い様子で言った。ティアはしかめっ面になりながら
「なにそれ。しかも姉妹だなんて。」
と、呆れた様子で言った。
 ディレィッシュは続ける。
「ただな、ちょっと夢うつつな時だったから、もしかすると、夢かもしれない。でも、夢のような感じはしなかったし、私は現実だと思うんだよな。」
 どうにも軽い様子のディレィッシュにニタやティアは肩を透かす。ハッシュは「居眠りする位なら、強がらずにちゃんと寝れば良かったのに!」と語気を強めた。
 ディレィッシュはへらへらと3人の追及を交わすが、クグレックだけは彼の話に思うところがあった。というよりも、ようやく思いだしたのだ。夢かもしれない、いや、妙に現実的な質感を持った夢のような空間であの黒髪の少女に出会ったことを。
 クグレックたちを襲った彼女はクグレックの夢で出会った彼女よりも大人だったのだ。だから、クグレックは気付かなかった、というよりも思いだせずにいた。
 「夢」と「少女」という言葉の鍵がクグレックの記憶を呼び起こす。

 そこは、真っ白な空間だった。
 時間は祖母が亡くなり、ニタに出会う前。クグレックが自らを思い出の詰まった燃え盛る住居に身を隠した後。
 クグレックよりも小さな、齢にして12,3歳くらいの白い袴を着たおかっぱの女の子がしくしく泣いていた。
 彼女はクグレックになんと言っていただろうか。
 確か、あの時彼女は『お姉ちゃんを、待ってる』と言っていた。
 待ってるというのは、アルトフールで待っているということなのか。彼女はアルトフールと一体何の関係があるというのか。
 クグレックはその後、祖母の声を耳にして、それどころではなくなってしまったので、彼女のことは全く気に欠けることなく意識の底に追いやっていた。そう言えば、あの時の祖母が何と言っていたのか、クグレックは思いだせない。
 
 次に彼女と会ったのはポルカのニルヴァ防衛戦時。魔力が尽きたクグレックは気を失って倒れてしまった。その時の夢でも彼女と出会った。彼女はクグレックを鼓舞してくれ、そして、尽きた魔力を元に戻してくれた。
 最初にあった時と異なって、泣いている様子でもなく、比較的落ち着いていたと思う。
 それ以降、彼女はクグレックの夢には現れなかった。トリコ王国ではクグレックの夢に出現したのは、ディレィッシュに潜んでいた魔だった。

 ディレィッシュは彼の夢に出て来た幼い彼女と、攻撃的な大人の彼女を姉妹としたが、クグレックはそうではないような気がしていた。どちらも同一人物だと感じたが、理由は分からない。何故彼女が成長した姿で現れたのか、どちらが本物の彼女なのか、クグレックには分からない。
 ただ、現実に現れた彼女はともかく、夢の中の幼い彼女の言うことならば、信用しても良い、とクグレックは考えた。何故ディレィッシュだけに姿を見せたのかは分からないが、きっと、ディレィッシュが会った彼女はクグレックが会った彼女と同一人物で信頼に当たるだろう。
 だから、クグレックは決意した。
 山頂のドラゴンを救ってあげなければ。それが、アルトフールへの道へとつながるのであれば、と。
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 2016_08_31

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