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薬物騒動とまやかしの恋②


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 夜が明けたばかりの朝靄漂う麓の集落にて。
 4人は登頂の記念の布を宿泊した宿屋の壁に垂らしていた。
 クグレックはピンク、ニタは白、ディレィッシュは水色、ハッシュは黄色の布を垂らす。コンタイ国の中でも、とりわけこの御山周辺は染料の元となる植物と鉱物が採れることから染色が盛んである。
「余った布は持って行きなさい。御山を離れてもここに布の片割れがある以上、お守りになってくれるから。」
 そう言ってティアは4人のリュックに布を結びつける。実は登山中もこのようにして布がリュックに結び付けられていた。
「じゃぁ、いってらっしゃーい!あたしはまだしばらくここにいるから、寂しくなったら戻って来ていいからね。」
 集落の入り口にてティアが4人とムーを見送る。
 ムーの存在はこの集落に住む人達には知らせていない。集落の民がムーの存在を知った時に、ムーの身に何が起こるか分からないからだ。そのため殆どの人達がまだ眠りについているこの時間を出発の時間にした。
 霊峰御山を背にし、一行が向かうのはコンタイ国の東端。大陸唯一の港があるティグリミップである。
 ティグリミップは歩いて2週間以上かかるため、そのうちほとんどがジャングルでの野宿となった。たまにジャングル内の小さな集落に辿り着くことがあったが、御山の麓の集落よりも時代遅れの集落だった。土とヤシの葉で作られた簡素な住居がほとんどであった。一見すぐ壊れてしまいそうな質素なつくりの家屋で、地面もヤシの葉の絨毯が敷かれているだけであまり外と変わらない。しかも寝るときはそのまま床に雑魚寝するだけだ。
 とは言え、集落に世話になる場合はニタがお土産と称して狩りをする。大抵の住民は喜んでくれて、食事もご馳走してくれるが、クグレックはあまり好きになれない味だった。ニタのサバイバル料理よりは手が込んであるが、主食の芋をペースト状にしたものが口に合わないし、虫も食材として扱われている以上、クグレックはどうしても好きになれない。ディレィッシュやハッシュ、ムーは特に抵抗なく食べているというのに。

 歩くこと2週間。
 クグレックは周りの景ジャングルの景色が徐々に開けてくるのを感じた。
 頭上を覆っていた樹木の枝や葉が少なくなり、その存在自体も少なくなってきている。草木をかき分け開けた場所に出ると、そこには気持の良い青空が広がっていた。そして、不思議な臭いを伴った風が吹き抜けて来た。ディレィッシュはすんと鼻でその匂いを嗅ぐと
「海が近づいて来たな。」
 と、呟いた。
「海?」
 ニタはその呟きに耳をピクリと動かして反応した。
「ニタは海を見たことがなかったか。」
 意外そうにハッシュが言った。
 ちなみにクグレックも海を見たことがない。それどころか湖や大河と言った広い水辺も見たことがなかった。
「ティグリミップまでもう少しです。この先は平野が続くので歩きやすくなっていますよ。…あれ?」
 ムーが遠くの方に視線を向けながら首を傾げた。
 ムーの視線の先にはぽつんと存在する立て看板。近付いて見てみると『知らない人には着いて行ってはいけません』という注意書きがあった。さらに、その文の下には小さい文字で『特に紅い髪をした人には注意』という表示が。
「なんだこれ、変な看板。」
 と、ニタ。
「しかも『紅い髪の人』って随分と限定的だな。人さらいが横行しているのか?こんなのどかな国で。」
 と、ディレィッシュが言った。
「治安が良くないのかもしれないな。強盗が出て来るかもしれないな。気をつけよう。」
 と、ハッシュが言う。
 ニタは『強盗』という言葉に反応し、気合が入る。ニタの中では悪即成敗なのである。
「ククも、俺達から離れるなよ。」
 ハッシュにそう言われてクグレックはこくりと頷いた。

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 2017_06_23

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