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ハワイにて②


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 翌日。無事に船はハワイ島に到着した。港はかもめがくるくると舞い、数人の現地の人達が船を出迎えにやって来ていた。
 船から降りると、首にハイビスカスの花輪を身に付けた現地の人達が数人やって来て「ようこそハワイへ」と歓迎の意を示された。そして、降りて来る観光客たちに自身が身に付けていたハイビスカスの花輪を被せた。
「これは魔除けの花輪なんです。ハワイ島は支配と文明の大陸からは離れていて、滅亡と再生の大陸に近いですからね。ホテルの部屋についたらこの花輪をばらしてお花を1房頭に付けたり胸ポケットに入れたりしてくださいね。」
 現地の人が説明してくれた。
 クグレックには赤や黄色のハイビスカスはまるで妖精が着ているドレスのようで可愛らしく見え、思わず笑みが零れた。
「えっと、ムー様ご一行は私フィン・ベストがご案内しますね。」
 クグレックたちの目の前に現れたのは、フィン・ベストと名乗る女性であった。肩までのゆるくふわふわとした巻き髪が可愛らしい、細身だが胸が大きくてスタイルが良いグラマラスな女性だった。クグレックと目が合うと、フィンはクグレックの緊張をほぐすかのように優しく微笑んだ。
「こんな美人さんに案内してもらえるなんて、私達はラッキーだなぁ。」
 ディレィッシュが上機嫌で言った。フィンは「ふふふ、精一杯ご案内させていただきますね。」と上目遣いでディレィッシュを見つめて返事をした。
 気を良くしたディレィッシュはフィンの肩を抱いて案内を頼もうとしたが、見かねたニタに「バカじゃないの?」と阻止された。
 ホテルへの道中、あからさまにフィンにメロメロになっているディレィッシュを見て、クグレックは妙に納得した。何故なら普通にフィンは美人であり、ディレィッシュは美人とみると声をかけるのを躊躇わない主義であるからだ。
 さて、クグレックが気になるのはディレィッシュの弟のハッシュである。
 クグレックから見てもフィンはとてもきれいで美人に見えるが、ハッシュはどう思っているのだろうか。やはり、ディレィッシュと同じようにめろめろになっているのだろうか。
 クグレックは歩きながらハッシュの様子をそっと伺う。ハッシュもまた、フィンのことを見つめている。ほんのりと頬が赤くなっており、その表情はどこか切なげだ。はてこれはどういう表情なのだろうとクグレックは首を傾げた。
 すると、ハッシュはクグレックの熱視線に気付き、
「クク、どうした?」
と尋ねた。
「フィン、美人さんだね。」
 とクグレックが言うと、ハッシュは瞬時に顔を赤くさせて「あぁ、そうだな。」と答えた。
(やっぱり、ハッシュも可愛いと思っちゃうくらい、フィンは美人さんなんだなぁ。)
 と、クグレックは単純にそう思った。恋初心者のクグレックはその先の感情が分からないためにハッシュの言葉の意味を読み取ることは出来ない。

「さて、着きましたよ。ここが皆さんの宿泊するホテルです。」
 さざなみの音が心地良い海岸線の遊歩道を進んだ先には天まで届きそうなくらいに背の高い建物がそびえ立っていた。20階ほどもあろう高層の建物だ。砂浜を想起させるアイボリーホワイトの外観はまるでタワー型のトロフィーの様な形であり、建物にしては珍しい形だった。1階のエントランスは全面ガラス張りになっていて、解放感が溢れている。温暖で大らかな気候のハワイ島とマッチした作りである。
 ガラスの扉を開き、一行はエントランスロビーで待たされた。フィンが受付を済ませている間、クグレックたちはふかふかの豪華なソファでしばしの談笑をしていた。
「ハワイ島はリリィという希少種の加護によって栄える土地だが、なかなか興味深いテクノロジーを持った島なのかもしれないな。」
 とディレィッシュが言った。
「どういうこと?」とニタが尋ねる。
「例えばこの建物の中だが、外に比べて、涼しいだろう?」
「うん。確かに。」
「こんなにガラス張りの外面では外から入り込む陽射しのせいで温度が上がるはずなのに、どうにも涼しいんだ。トリコ王国にも空気を冷やしたり温めたりする機械があったのだが、ここもそうなのだろうか。」
「ハワイ島も超テク文明なの?」
「さぁな、それは私には分からん。トリコの技術は門外不出だ。それに、世の中には《魔法》という力も存在するから、もしかするとリリィの加護によるものなのかもしれないな。このホテルの作りも、並大抵の建築技術では作れないだろう。」
「へぇ、そんなもんなの。」
「そうなのさ。」
 とディレィッシュは言った。
 と、そこへフィンが戻って来た。
「受付が済んだから、部屋に案内しますね。」
 フィンはにこりと笑って奥へと案内した。そこには3つの扉があり、フィンは真ん中の扉の横についているボタンを押した。
「…エレベーターか?」
 ディレィッシュが言った。
 フィンはにこりと微笑んで「えぇ、そうです。この島も電気の力に頼っています。まぁ正しく話せばリリィの力ですけど」と言った。
 ちんと音が鳴ると同時にエレベーターの扉が開いた。
 一行はエレベーターに乗り込み、目的の階へ向かう。部屋は最上階の24階だった。
 部屋はニタとクグレック、ハッシュとディレィッシュとムーで別れることになった。最上階の部屋はホテルの中でも一番いい部屋である。大きな窓からの眺望は、ハワイ島とその先に続く宝物の様な青い海を俯瞰することが出来て、まるで神様になったかのような心地である。
 部屋はリゾート感あふれる家具で統一され、心がふわりと開放的になる様な特別な空間が作りだされていた。
「では皆さんにお部屋の説明をしますね。」
 フィンは部屋の隅にある白いチェストの扉を開いて中を見せた。扉を開いた瞬間、ひやりとした冷気が漂った。
「飲み物はこちらの冷蔵庫に入っていますので自由にお飲みください。」
 中には水やオレンジジュース、ワインなどが入っていた。
「あ、これトリコ王国にもあったやつだね。」
 と、ニタが言うと、フィンは何も言わずににこりと微笑んだ。
「あれ、でも、トリコ王国の技術は門外不出だったような…。」
と、ニタが言う。クグレックは不安になり、ディレィッシュとハッシュの二人を見たが、二人の表情は特に変わらない。
 すると、不安がるクグレックにフィンは気付いたのか
「大丈夫ですよ。トリコ王国のものとは別の物ですし、深く話せば難しいものですが、とどのつまりはリリィの加護です。」
と、言った。
「リリィは凄いな。」
 ハッシュが言った。
「えぇ。このハワイ島は所属が『支配と文明の大陸』と『滅亡と再生の大陸』の間なのです。なので、この島は「おもてなしと休暇の土地」という目的をもっています。そのためにリリィの力が発揮されるのです。」
「…なにそれ?なんで二つの大陸の間だから、『おもてなしと休暇の地』という目的になるの?」
 ニタが尋ねる。
「うーん、私も詳しいことは分かりませんが、『滅亡と再生の大陸』では土地が生きているらしいです。その土地がその通り名の地になるために土地が住民を呼び、その名の通りの地になるように発展していくようになっているらしいです。」
「ってことは、リリィという希少種がハワイ島に呼ばれて、ハワイ島をおもてなしと休暇の地にするために色々やってるということ?」
「そうですね。」
 フィンはにこりと微笑む。少しの間があり、フィンは部屋の説明を続ける。
「…では、続きいきますね。お食事もこちらのメニュー表にあるものをこの電話からお伝え頂ければ、すぐにお持ちします。また、他に何かご用命がありましたら、おなじくこちらの電話からお伝え頂ければお力添えいたしますね。」
 フィンは壁に取り付けられた受話器を指差す。この電話は寝室のサイドテーブルにもあるらしい。
「あとは、皆さんは4泊5日の滞在ということで、お食事の方は朝と昼と夜も当ホテルでも用意しておりますが、ご用命によっては浜辺でバーベキューの準備も致しますので、どうぞお声がけください。では、困ったことがありましたらいつでもこちらの電話でお呼びください。」
 そう言ってフィンは部屋を出て行った。
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 2019_07_02

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