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海底神殿③


*********


 翌日、一行はガラクタ広場へ向かい、例の穴の前までやって来た。
 とりあえず、行ってみるしかないということで、穴から少し離れたところに杭を打ち、その杭にロープをしっかりと結びつけ、穴へ垂らした。
 ロープを伝って穴の中に入っていくと、不思議な空間が広がっていた。
 足元は湿っており、磯臭い。灯りをつけると分かったのだが、この穴の中は良く磨かれた白い大理石で出来ている。目の前には白地に金色の細工が施された陶器製の扉があった。この扉は鍵が付いていないのだが、開けることが出来ない。扉のレプリカと言うわけではないのだが、どういうわけか開かない。
「この扉は魔法がかかってるみたい。」
 と、アリスは扉に触れながら言った。
「お、それじゃあ、クク、鍵開けの魔法だ!」
と、ニタがクグレックを促す。クグレックは杖を扉に向けて、「アディマ・デプクト・バッキアム」と言って鍵開けの魔法を放った。すると、扉はゆっくりとひとりでに開いた。
 そして、一同は驚愕するのであった。扉が開いたことだけではない。
 なんと、扉の先は水中となっているのである。不思議なことに扉をあけても目の前の水がこちら側に溢れ出て来ることはない。透明なガラスで遮られているかのように扉の中は水で満ちている。
「うええ、なんだこれ、入れるの?」
と、ニタが言うと、ムーは「うん、入れるよ」と言って、怖気づくことなくぽちゃんと水音を立てて水の中へと入っていた。
「えぇー!」
 一同は扉の先の水中にいるムーに驚いた。水中なのに息は持つのだろうかと不安になるが、ムーは苦しそうには見えない。ずんずんと歩き進むムーは、ふと振り返って誰も後を着いて来ないことに気付くと「どうして来ないの?」と言わんばかりに泡をぶくぶくと吐き出す。残念なことに声は聞こえなかった。
「もともと怖がりのムーが進めるのだから、きっと大丈夫だよ!」
 と、のたまうのはムーの恋人であるルルだった。ルルも自身のフカフカの緑の毛が濡れてしまうことも気にせず、ばしゃんと水飛沫を上げて扉の中へと勢いよく突入した。
「…ええい、行くしかないよ。ね、クク!」
 とニタも言うと、クグレックの手を引っ張って、扉へと突撃した。クグレックは心の準備が整わないまま扉の中へ連れていかれ、慌てて息を止めた。
 ばしゃんと水の中へ入る。目の前は気泡で一杯となり良く見えなかったっが、やがて落ち着いて来るとそこは間違うことなく水の中だった。少しばかりひんやりしており、身体がふんわりと浮きそうになる感覚がする。
 ニタもルルも口元を抑え、息が漏れないようにしている。二人は深呼吸してから突入したから、まだ息が持つであろうが、心の準備も何もないままニタに連れて来られたクグレックはそろそろ苦しくなっていた。
 クグレックは振り返って外に出ようとしたが、「待って」とムーに止められた。
 再び振り返ると、ムーは口からぶくぶく気泡を出しながら「ここでは息も吸えますよ。大丈夫です。」と言った。ぶくぶく空気を吐く音が邪魔であり、籠った感じ聞こえるが、不思議なことにムーの声が聞こえた。
 クグレックはおそるおそる口開き、息を吐き出す。ぶくぶくと泡となって上の方に上がっていく。
 そして、勇気を出して息を吸ってみた。
 大量の水を呑みこむことになるのだろうか、と心配になったが、いや、口の中にしょっぱい水、すなわち海水が入り込んできてはいるが、感覚として空気を取り込むことが出来ている。
「どういうこと?」
 ぶくぶく泡を吐きながらクグレックが問う。
 そんなクグレックの様子を見ながら、ルルとニタもおそるおそる呼吸を行い、クグレックと同様に狐につままれたような表情をするのであった。
「古代の人がかけた魔法の力です。ここ海底神殿では海の中でも呼吸が出来るようになってるんです。」
 ぶくぶくと音を立てながらムーが言った。
「さらに、ちょっと動きづらいですが、歩くことも出来ます。残念ながら、飛ぶことは出来ませんけど」
「えー、でも、すごいよ。水の中で息が出来るなんて。」
 海中が危険をはらむ場所ではないことを知ると、ニタは嬉しそうに動き回った。ふわっと飛び上がれば、ゆっくり沈んでいく。腕をかけばわずかに浮き上がった。徐々に沈んでしまうが、歩くよりも泳いだ方が早く動けるということが分かると、ニタは魚のように自由に泳ぎまわった。
 そして、クグレックたちが水の中でも安全だということが分かると、残りの者達も後に続いた。

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 2023_09_07

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