嫉妬歓迎、焼餅をやかせてみよう大作戦②
Category: アルトフールの物語
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さて、話は戻って3日前。
事態は修羅場を迎えていた。
ククが目を真っ赤にして今にも泣きそうな表情で睨み付ける人物の姿があった。
それは銀髪紅目の男、ビカレスクであった。
ビカレスクは床に座り込んで自分の手の中の物を見つめる。
手の中にあるのは、光に輝く金のネックレスであるが、チェーン部分は粉々に砕かれ、そして、トップに着いているウミガメのチャームは首がもげていた。ピンクの宝石も、宝石といえども素材はガラスであったため、ヒビが入って欠けていた。
ディレィッシュの発明した自律式貴金属探知機で遊んでいたビカレスクだったが、どうにもポンコツな機械だったらしく、ククが身に着けていたウミガメのネックレスを感知するや否や、急に飛びついていって、無理やりククの身からネックレスを剥がした。その時にネックレスのチェーンが千切れた。そして、金属探知機は次に勝手にそのチャームの価値を図ろうとしたら、力の加減が調節できず、ウミガメのチャームおよびピンクガラスを潰した。
そして、金属探知機はまるで寿命を遂げる星が超新星爆発をするかのごとく大きな音と黒い煙を上げてショートした。
ビカレスクは慌てて探知機の残骸からククのネックレスの残骸を集めるが、無残な状態となってしまっていた。ククを見ると、見たこともないような悲壮な顔をしていた。首周りは、ネックレスのチェーンが無理やりちぎられてしまったために、少し切れて血が滲んでいる。
ククの様子を見て、自分がとんでもないことをやらかしてしまったことに気付いた。ただ、覆水盆に返らずという言葉があるように、壊れてしまったものはもとに戻すことは出来ない。最早どうすることもできないのだ。
そういうわけで、ククは今にも泣きだしそうな様子でいるし、ビカレスクはククの大切なものを破壊してしまって呆然自失としていた。
―ぐすっ。
ビカレスクはドキッとしてククの方を見た。やばいと思った。ククは顔を両手で覆ってシクシク泣いているのだ。泣いて悲しむ程に大切なネックレスだったのだろう。ビカレスクは後悔しても仕切れなかった。
ビカレスクは意を決して立ち上がった。そしてククに近付くと、身をかがめてネックレスで切れたククの首筋の血を舐め取った。
「ひゃぁ!」
首筋の感触にククは思わず声を上げて、顔を覆っていた手を離す。そして、ビカレスクが自分の首筋を舐めている様子を見て、今度は怒りがこみ上げて来た。ククは瞬時にビカレスクを両手で突き飛ばす。
「いてっ。」
ビカレスクは床に尻餅をついて倒れた。唇に付いた血を舐め取りながら、ククを見上げると、ククは怒りに包まれた表情をして殺気立っていた。ビカレスクはククに魔女特有の狂気的な空気を感じ一瞬身震いをしたが、気を取り直してククに話しかける。
「クク、本当にごめん。悪気はなかったんだ。大切なものだってのに、本当に悪かった。出来ることがあれば、何でもする。だから、本当にごめん!」
そう言ってビカレスクは地べたに頭を着けて謝罪する。だが、ククの返事は何もなかった。代わりに聞こえたのは、ククの足音だけ。ビカレスクから遠ざかり、しまいには部屋を出て行ってしまった。
ビカレスクは大きくため息をついた。そして、口の中のククの血を味わう。
少し力が湧いて来た。
これで、ククとの短期的な悪魔と魔女の契約は完了した。やはりあのネックレスはククの大切なものだったのだ。
ククの大切なネックレスという代償と魔女の血を受け取ったということは、悪魔であるビカレスクは魔女ククに対してその望みを叶える契約を行ったということである。ククは一言も望みを言葉にしなかったが、ククの望みなど、言われなくても誰もが知っている。
ビカレスクは償いを実施することを決めた。
しかし、ククと契約して得られる力はなんとも心地良い。本契約を行ったらもっと力が手に入るが、本契約に必要なのはククの処女なので、その気持ちは胸の奥底に閉まって置くことにした。ククも別に処女をビカレスクなんかに捧げるつもりもないだろうし、ビカレスクはアルティメットがいる手前、そんなことは出来なかった。
しかしながら、ククのネックレスを壊したのは間違いなくビカレスクではあったのだが、ポンコツ発明品を渡したディレィッシュにも責任はあるはずじゃないだろうかとビカレスクは思ったが、ディレィッシュにはこのネックレスを復元することが出来るかだけ打診してみることに決めた。
それが3日前の出来事だった。
to be continued.
さて、話は戻って3日前。
事態は修羅場を迎えていた。
ククが目を真っ赤にして今にも泣きそうな表情で睨み付ける人物の姿があった。
それは銀髪紅目の男、ビカレスクであった。
ビカレスクは床に座り込んで自分の手の中の物を見つめる。
手の中にあるのは、光に輝く金のネックレスであるが、チェーン部分は粉々に砕かれ、そして、トップに着いているウミガメのチャームは首がもげていた。ピンクの宝石も、宝石といえども素材はガラスであったため、ヒビが入って欠けていた。
ディレィッシュの発明した自律式貴金属探知機で遊んでいたビカレスクだったが、どうにもポンコツな機械だったらしく、ククが身に着けていたウミガメのネックレスを感知するや否や、急に飛びついていって、無理やりククの身からネックレスを剥がした。その時にネックレスのチェーンが千切れた。そして、金属探知機は次に勝手にそのチャームの価値を図ろうとしたら、力の加減が調節できず、ウミガメのチャームおよびピンクガラスを潰した。
そして、金属探知機はまるで寿命を遂げる星が超新星爆発をするかのごとく大きな音と黒い煙を上げてショートした。
ビカレスクは慌てて探知機の残骸からククのネックレスの残骸を集めるが、無残な状態となってしまっていた。ククを見ると、見たこともないような悲壮な顔をしていた。首周りは、ネックレスのチェーンが無理やりちぎられてしまったために、少し切れて血が滲んでいる。
ククの様子を見て、自分がとんでもないことをやらかしてしまったことに気付いた。ただ、覆水盆に返らずという言葉があるように、壊れてしまったものはもとに戻すことは出来ない。最早どうすることもできないのだ。
そういうわけで、ククは今にも泣きだしそうな様子でいるし、ビカレスクはククの大切なものを破壊してしまって呆然自失としていた。
―ぐすっ。
ビカレスクはドキッとしてククの方を見た。やばいと思った。ククは顔を両手で覆ってシクシク泣いているのだ。泣いて悲しむ程に大切なネックレスだったのだろう。ビカレスクは後悔しても仕切れなかった。
ビカレスクは意を決して立ち上がった。そしてククに近付くと、身をかがめてネックレスで切れたククの首筋の血を舐め取った。
「ひゃぁ!」
首筋の感触にククは思わず声を上げて、顔を覆っていた手を離す。そして、ビカレスクが自分の首筋を舐めている様子を見て、今度は怒りがこみ上げて来た。ククは瞬時にビカレスクを両手で突き飛ばす。
「いてっ。」
ビカレスクは床に尻餅をついて倒れた。唇に付いた血を舐め取りながら、ククを見上げると、ククは怒りに包まれた表情をして殺気立っていた。ビカレスクはククに魔女特有の狂気的な空気を感じ一瞬身震いをしたが、気を取り直してククに話しかける。
「クク、本当にごめん。悪気はなかったんだ。大切なものだってのに、本当に悪かった。出来ることがあれば、何でもする。だから、本当にごめん!」
そう言ってビカレスクは地べたに頭を着けて謝罪する。だが、ククの返事は何もなかった。代わりに聞こえたのは、ククの足音だけ。ビカレスクから遠ざかり、しまいには部屋を出て行ってしまった。
ビカレスクは大きくため息をついた。そして、口の中のククの血を味わう。
少し力が湧いて来た。
これで、ククとの短期的な悪魔と魔女の契約は完了した。やはりあのネックレスはククの大切なものだったのだ。
ククの大切なネックレスという代償と魔女の血を受け取ったということは、悪魔であるビカレスクは魔女ククに対してその望みを叶える契約を行ったということである。ククは一言も望みを言葉にしなかったが、ククの望みなど、言われなくても誰もが知っている。
ビカレスクは償いを実施することを決めた。
しかし、ククと契約して得られる力はなんとも心地良い。本契約を行ったらもっと力が手に入るが、本契約に必要なのはククの処女なので、その気持ちは胸の奥底に閉まって置くことにした。ククも別に処女をビカレスクなんかに捧げるつもりもないだろうし、ビカレスクはアルティメットがいる手前、そんなことは出来なかった。
しかしながら、ククのネックレスを壊したのは間違いなくビカレスクではあったのだが、ポンコツ発明品を渡したディレィッシュにも責任はあるはずじゃないだろうかとビカレスクは思ったが、ディレィッシュにはこのネックレスを復元することが出来るかだけ打診してみることに決めた。
それが3日前の出来事だった。
to be continued.
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