あなたに会いに行く(終)
Category: アルトフールの物語
「さぁ、幻を解きましょう。土地と魔物はこのぬいぐるみに憑いている。このぬいぐるみを壊せば、全てがおわる。ククの火の魔法でこのぬいぐるみを燃やして。」
マナは、ウサギのぬいぐるみを投げ捨て、手を前に出すと、そこから煌々と輝く光を発した。ククに向かってその光を放つと、ククは光に包まれた。ククは少しだけ体が楽になったような心地がした。転移魔法を使ったせいで魔力が底をついていたが、この光に包まれたら、魔力も少しだけ回復したような気がした。
ククは、杖を手に取り、詠唱を行う。
「イエリス・レニート・ランテン・ランタン。炎よ、燃やし尽くせ。」
ククの杖からは、小さな火の玉が発せられ、子汚いウサギのぬいぐるみに向かって飛んで行った。
ウサギのぬいぐるみはあっという間に炎に包まれ、灰と化した。
すると、周辺の空気が変わったような気がした。
マナに付着していた血が消え、彼女はただ泥にまみれただけの姿になっていた。
そして、ククの杖に巻き付けられていたイルカのネックレスもその形をゆっくりと消していった。
確かにククの首元についていたイルカのネックレスは、いとも容易くその姿を消した。幻であるハッシュがくれたプレゼントも間違いなく幻なのだ、ということをククは感じて、悲しくなった。と、同時に安心もした。倒れてしまったハッシュは、幻だったのだ、と確信できたからだ。
だが、傍らにあった骨の山は消えることがなかった。現実として、ククとマナの目の前に残っている。
二人は疲労困憊していたが、力を振り絞って、大きな穴を掘った。そして、その穴の中に骨を入れ、土を被せて埋めた。
炭と化した木材を持ってきて、その上に建てると、入り口にかかっていたククの魔除けのお守りを取って来て、木材に括り付けた。これが、この集落で奇しくも命を落としてしまった人々のための墓標である。
ククとマナは墓の前で手を合わせ、集落の人々の、そして、シオンやアンリと言ったあの子供たちの冥福を祈った。
空は暗くなり、既に無数の星たちが輝いていた。
虫たちのオーケストラはそんな星空の下で、この集落のための鎮魂歌を奏でていた。
「もしかすると、この土地は、気付いてほしかったのかもしれない。生きるすべを失くした土地が最後に披露した悪あがきは、この土地を愛し、生活を営んでくれた住人達に対する最期の恩返しだった。弔うことが出来て、良かった。」
*********
後日談。
あれから、私達は平々凡々とした日々を送っている。
ハッシュは、まだ帰って来ない。
いつ帰って来るのか分からないけど、私は希望を持って、彼のことを待ってみる。
でも、もしハッシュが戻って来なかったらそれはそれでいいと思う。
きっと、彼の存在が誰かの助けになっているのならば、それでいい。
それにしても、今日は良い月夜だ。
窓を開け放ち、風を取り入れる。
さわ、と入り込んでいる風は涼しげだった。夏の終わりを予期させる。
ふと私は窓の外を覗き込んだ。
家の外には人影があった。
その影は、私の方を見ている。
私は、ほっと安心してその影に向かって手を振った。
「おかえり。」
と、私は小さく呟く。
影は大きく私に向かって手を振ってきた。
月影に太陽のような笑みを浮かべて、彼の口は「た、だ、い、ま」と動いた。
マナは、ウサギのぬいぐるみを投げ捨て、手を前に出すと、そこから煌々と輝く光を発した。ククに向かってその光を放つと、ククは光に包まれた。ククは少しだけ体が楽になったような心地がした。転移魔法を使ったせいで魔力が底をついていたが、この光に包まれたら、魔力も少しだけ回復したような気がした。
ククは、杖を手に取り、詠唱を行う。
「イエリス・レニート・ランテン・ランタン。炎よ、燃やし尽くせ。」
ククの杖からは、小さな火の玉が発せられ、子汚いウサギのぬいぐるみに向かって飛んで行った。
ウサギのぬいぐるみはあっという間に炎に包まれ、灰と化した。
すると、周辺の空気が変わったような気がした。
マナに付着していた血が消え、彼女はただ泥にまみれただけの姿になっていた。
そして、ククの杖に巻き付けられていたイルカのネックレスもその形をゆっくりと消していった。
確かにククの首元についていたイルカのネックレスは、いとも容易くその姿を消した。幻であるハッシュがくれたプレゼントも間違いなく幻なのだ、ということをククは感じて、悲しくなった。と、同時に安心もした。倒れてしまったハッシュは、幻だったのだ、と確信できたからだ。
だが、傍らにあった骨の山は消えることがなかった。現実として、ククとマナの目の前に残っている。
二人は疲労困憊していたが、力を振り絞って、大きな穴を掘った。そして、その穴の中に骨を入れ、土を被せて埋めた。
炭と化した木材を持ってきて、その上に建てると、入り口にかかっていたククの魔除けのお守りを取って来て、木材に括り付けた。これが、この集落で奇しくも命を落としてしまった人々のための墓標である。
ククとマナは墓の前で手を合わせ、集落の人々の、そして、シオンやアンリと言ったあの子供たちの冥福を祈った。
空は暗くなり、既に無数の星たちが輝いていた。
虫たちのオーケストラはそんな星空の下で、この集落のための鎮魂歌を奏でていた。
「もしかすると、この土地は、気付いてほしかったのかもしれない。生きるすべを失くした土地が最後に披露した悪あがきは、この土地を愛し、生活を営んでくれた住人達に対する最期の恩返しだった。弔うことが出来て、良かった。」
*********
後日談。
あれから、私達は平々凡々とした日々を送っている。
ハッシュは、まだ帰って来ない。
いつ帰って来るのか分からないけど、私は希望を持って、彼のことを待ってみる。
でも、もしハッシュが戻って来なかったらそれはそれでいいと思う。
きっと、彼の存在が誰かの助けになっているのならば、それでいい。
それにしても、今日は良い月夜だ。
窓を開け放ち、風を取り入れる。
さわ、と入り込んでいる風は涼しげだった。夏の終わりを予期させる。
ふと私は窓の外を覗き込んだ。
家の外には人影があった。
その影は、私の方を見ている。
私は、ほっと安心してその影に向かって手を振った。
「おかえり。」
と、私は小さく呟く。
影は大きく私に向かって手を振ってきた。
月影に太陽のような笑みを浮かべて、彼の口は「た、だ、い、ま」と動いた。
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