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やがて、銀色



明日の私によろしくね


お題をお借りしました→月と戯れる猫
 
 鬱屈した黒い雲からちらちらと雪が降って来た。
 私の故郷は寒風吹き荒ぶ北の土地にあった。だから、雪が降る度に故郷のことを思い出す。
 故郷を捨てたのは、まだ雪が降らない晩秋の頃だった。
 乾いた冷たい風は、どんなに厚いコートを着ても、少し油断したちょっとの隙間から入り込んで来て骨の髄までしみた。
 ちらちらと降る雪。手を伸ばせば、手のひらに雪が舞い降りる。
 小さな冷たさを感じて、雪を目にしたいと思うが、すぐに溶けてしまう。
 もう、足が動かない。
 逃げる時にやられた左足の創傷が酷かった。
 布を巻いて止血を試みたが、もう真っ赤に滲んでいる。
 逃げて来たのは良いけども、こんな木々も民家も何もない枯草広がる平原に来てしまったのが間違いだったのか。
 このまま雪が降り積もり、私は雪に埋もれて凍えて死んでしまうのだろうか。
 あなたに会いたかった。
 あなたに会いたくて逃げ出したのに、ここで尽き果ててしまうのか。
 左足は痛みしか感じない。右足、腕、体はすっかり冷えてしまった。
 静かに雪が降る無音の大地に響くのは私の呼吸音ばかり。
 今、あなたはどこにいるのだろう。
 あなたという存在を思い出している時だけは、冷え切った私の体の中の奥にある、心だけがぽかぽか温まって来るんだ。
 太陽のようなあなたに触られて、私は幸せだった。
 幸せだった。
 あなたの胸に抱かれたい。
 私の心はこの大地と同じだった。曇天と冷たく乾いた風が吹きすさぶ枯草の平原。
 あなたの存在は、まるで太陽の様だった。私に温かさと明るさを教えてくれた。それはとても心地よかった。枯草の平原は、いつしか芽吹きの平原となり色とりどりの花に溢れた。あなたがもたらしてくれた色のある世界。
 私はそんな世界を知れただけで幸せだったから。
 この優しい温かさに安心して、少しだけ眠ってしまおう。
 少しだけ。





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 2014_10_09

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