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酔っ払いクグレック

Category: アルトフールの物語   Tags: *  


 とある宴会の最中。

 クグレックはお酒を口にしてしまい、泥酔状態に。

 酔ったククはハッシュとディレィッシュの区別すらつかなくなり・・・



 
 夜も更け、食堂は酔いつぶれたもの、体力が尽きたものがそこらに倒れている。ククとクルガはそれをかいくぐり、せっせと片づけを行っていたが、ククがハクアに呼び止められた。凄く酒臭い。
「ちょっと、アンタ何してんのよ。ほら、ハッシュとちゃんと喋りなさいよ。」
「え、でも、片付けなきゃ…。」
「片付けなんて後で良いのよ。ほら、これ呑んで。」
 ハクアはそう言って、ククに無理矢理お酒を飲ませる。ククはまだお酒の味を知らないので、ただ苦くて不味いだけのものにしか感じられなかった。アルコールが喉を焼けるように通り過ぎる。
「ハクア、それ、強い酒…」
 ハッシュが心配そうに止めるが、ククは飲まされた分をだらだらこぼしながらも飲み干してしまった。
 するとククは急に体が熱くなって来て、頭もボーっとしてきた。
「…ハクア、熱いよう…。」
 息を荒くさせ、目を赤く潤ませながら、ククはハクアに訴えかける。自然とハクアに抱き着いている。
「これはなんという破壊力。」
 ハクアはハッシュにちらりと見遣ると、ククの頬を両手で包み込み、うっとりした表情でククを見つめる。
「クー、その表情をハッシュに見せてやりなさいよ。ねぇ、ハッシュ?」
 そう言って、ハクアはハッシュではなく、すぐそばにいたディレイッシュを呼び寄せた。ディレィッシュはつい先ほど潰れたばかりだったが、もう復活していた。
「え?俺ディレィッシュだけど?今更?」
 ハクアは、意地悪な笑みを浮かべながらくいくいとククを指差して見せる。ディレィッシュは、くたくたになったククを見ると、ごくりと生唾を呑みこんだ。
「あぁ、おれ、八ッシュだったな。筋トレ大好き!」
「兄貴…。そんな風に俺のこと…。」
 白々しく弟に成り済ますディレィッシュを見ながら、ハッシュは表情を曇らせる。
「ハッシュ…?はぁはぁ、あのね…、ごめんね、ちょっと暑くてふらふらするの…。」
 ククは息を荒くさせながら、ハクアから離れると、今度はくたりとディレィッシュの胸の中に倒れ込む。ディレィッシュは恍惚の表情を浮かべながら、ククを支える。
「…?ハッシュ?痩せた…?」
 ディレィッシュの胸に顔を埋めながら、ククはペタペタとディレィッシュの体を触る。
「あ、ククちゃん、そんなところ、触らないで。いやん。」
 へべれけになるククをじっと見つめるハッシュ。傍にあるウォッカの瓶を豪快に仰ぐと、口端からこぼれ出た酒を拭い取り、どんと音を立てて瓶を床に置いた。そして、じっとククとディレィッシュの様子を見つめる。
「うう、気持ち悪いよー。」
「大丈夫?吐きたいならトイレ行く?」
 ちょっとした出来心だったとはいえ、ディレィッシュは自分がやらかしてしまったことの重大さを感じた。目の前の血を分けた弟の視線がこちらに釘付けなのである。その眼はまるで猛禽類の様に鋭かった。空から小動物を狙う鷲の如く、ククとディレィッシュの様子を、しかしながら比較的穏やかな表情で黙って見つめている。落ち着いた弟の様子に、ディレィッシュは一瞬安堵するが、その中身はとんでもなく禍々しい。
 そんなハッシュの様子を気にも止めずにディレィッシュに侍るククは、嘔吐感の不快さから逃れようとディレィッシュをぎゅっと抱きしめる。
「気持ち悪いよー」
 ディレィッシュは、ハッシュの視線を気にしながらも、ククの背中をさする。
 その瞬間、ハッシュがゆっくりと立ち上がり、ディレィッシュの前に立ちふさがった。
 無表情で兄を見つめる弟を目の前にディレィッシュの酔いはすっかり冷めた。
「ハッシュ、あの、ごめんなさい。」
 ハッシュはにっこり微笑んで
「分かればよろしい。」
と、言った。そして、ククの腕を掴み、立つように促した。ククはふらふらしながら立ち上がる。
「俺はこっち。」
 ククは立ち上がるとふらふらとバランスを崩して、ハッシュに寄り掛かる。
「あれ、どうしよう、私ってば、間違えちゃった。」
「ん、あれは貧相な体をしてるから、次は間違えるなよ。さ、トイレ行こうか。」
「うう。ごめんね。」
「いいんだ。ククは悪くないから。」
 ハッシュはククの頭を撫でながら、ククの体を支え、食堂を抜け出す。
 入り口で潰れかけていたビカレスクが「お持ち帰りか?!」と囃し立てたが、ハッシュは彼を足蹴にした。

 ディレィッシュはぽつりと呟いた。
「ハッシュって、俺のこと、どう思ってるんだろう。」
 隣のハクアは手酌をしながら、淡々とした様子で
「血の繋がった反面教師?」
と返事をした。

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テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 2015_01_24

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