それは手紙や袋とじになった本を切り裂くための物。
紙という、か弱き素材のみ裂くために存在する。
それ以外の強固な素材を傷つけるために存在したのではない。
もともとはフランス装の装丁の本を切り開くためのナイフであるらしい。
本に使用するのが一番正当な使用法なのであろう。
紙という、か弱き素材のみ裂くために存在する。
それ以外の強固な素材を傷つけるために存在したのではない。
もともとはフランス装の装丁の本を切り開くためのナイフであるらしい。
本に使用するのが一番正当な使用法なのであろう。
「うおーい、ディッシュさんよーい」
ハクアがディレィッシュの部屋にやってきた。最近ネットゲームにはまっている彼女は度々ディレィッシュの元を訪れては、パソコンの扱い方を質問する。ぐるりと薄暗いディレィッシュの部屋を見回すが、ディレィッシュは見当たらない。
それにしてもディレィッシュの部屋は汚い。
あらゆるガラクタに床が埋め尽くされており、足の踏み場もない程だ。
それでも時々彼の部屋からは立派な物が発掘されることがある。一体どのくらいの値が張るのだろうと目を見張るほどの代物がガラクタの下に埋まっているのだ。
今回、ハクアは立派なナイフを見つけた。
柄の部分はおそらく純金製だろう。そして精緻な螺鈿細工が薔薇の紋章の形に施されている。更に端にはルビーやサファイア、エメラルドの宝石が嵌めこまれている。刃は鋭くシルバーに輝いており、見るからに立派なナイフである。
よく見ると、このナイフの刃は厚くなっており、何物も切れそうにない。儀式用のナイフなのか、と白亜は推測した。
「それ、ペーパーナイフだよ。俺のお気に入りでね、トリコから持って来た奴の一つ。」
ハクアの背後から話をするディレィッシュ。ハクアは振り向いて、「随分と良い物持ってるじゃない。」とその豪華なナイフを舐めるように見つめながら言った。
「うん。本当に良い物だよ。エロ本の袋とじもめっちゃ綺麗に開けるんだ。」
「あんた、こんな立派なものをそんなもんに使ってんの?」
「まぁね。でも、トリコグッズの中では一番使用頻度は高いかな。前に見せた万年筆よりもこいつは使える。」
ハクアはふとペーパーナイフの刃先に一筋の傷を見つけた。まるで剣の攻撃でも防いだかのような跡だ。
「護身用にも使えるってわけね。」
「あ。それ。」
ハクアはディレィッシュにナイフの傷を見せた。ディレィッシュは傷をまじまじと見つめながら、ふふっと鼻で笑った。
「俺を殺しに来るような輩もいたし、頭が痛くなるくらいの嫌な手紙も開けたし、糞みたいな本も沢山読んできた。」
ディレィッシュはハクアの横を通り抜け、ガラクタの中から一冊の雑誌を取り出した。
「でも、今ではこの子の麗しい体を拝見したくて使うに過ぎない、ただのナイフだ。」
その雑誌には、薄い衣を身にまとっている大変刺激的で美しい女性が写っていた。
「俺は、それでいいと思うんだ。誰も傷つけることのないナイフで。」
しみじみと語るディレィッシュに対してハクアは「ふーん」と言った。
「でも、ま、宝の持ち腐れよね。」
「いや、こいつはあくまでもペーパーナイフだ。これがあるべき姿さ。余計な背景なんて、いらないのさ。」
ハクアは再び「ふーん」と気の抜けた相槌をすると、こっそり自分のポケットにペーパーナイフを入れようとした。が、すぐにディレィッシュがその腕を掴む。
「おい、ばか、なんで持ってこうとするんだよ。この前の万年筆も持って帰ろうとしただろ。」
「売ったらどのくらいの値段になるんだろうなと思って。」
「だめ!これは俺の宝物!」
ハクアはチッと舌打ちした。
結局彼はペーパーナイフにあるまじき背景を持った、このペーパーナイフが好きらしい。
ハクアがディレィッシュの部屋にやってきた。最近ネットゲームにはまっている彼女は度々ディレィッシュの元を訪れては、パソコンの扱い方を質問する。ぐるりと薄暗いディレィッシュの部屋を見回すが、ディレィッシュは見当たらない。
それにしてもディレィッシュの部屋は汚い。
あらゆるガラクタに床が埋め尽くされており、足の踏み場もない程だ。
それでも時々彼の部屋からは立派な物が発掘されることがある。一体どのくらいの値が張るのだろうと目を見張るほどの代物がガラクタの下に埋まっているのだ。
今回、ハクアは立派なナイフを見つけた。
柄の部分はおそらく純金製だろう。そして精緻な螺鈿細工が薔薇の紋章の形に施されている。更に端にはルビーやサファイア、エメラルドの宝石が嵌めこまれている。刃は鋭くシルバーに輝いており、見るからに立派なナイフである。
よく見ると、このナイフの刃は厚くなっており、何物も切れそうにない。儀式用のナイフなのか、と白亜は推測した。
「それ、ペーパーナイフだよ。俺のお気に入りでね、トリコから持って来た奴の一つ。」
ハクアの背後から話をするディレィッシュ。ハクアは振り向いて、「随分と良い物持ってるじゃない。」とその豪華なナイフを舐めるように見つめながら言った。
「うん。本当に良い物だよ。エロ本の袋とじもめっちゃ綺麗に開けるんだ。」
「あんた、こんな立派なものをそんなもんに使ってんの?」
「まぁね。でも、トリコグッズの中では一番使用頻度は高いかな。前に見せた万年筆よりもこいつは使える。」
ハクアはふとペーパーナイフの刃先に一筋の傷を見つけた。まるで剣の攻撃でも防いだかのような跡だ。
「護身用にも使えるってわけね。」
「あ。それ。」
ハクアはディレィッシュにナイフの傷を見せた。ディレィッシュは傷をまじまじと見つめながら、ふふっと鼻で笑った。
「俺を殺しに来るような輩もいたし、頭が痛くなるくらいの嫌な手紙も開けたし、糞みたいな本も沢山読んできた。」
ディレィッシュはハクアの横を通り抜け、ガラクタの中から一冊の雑誌を取り出した。
「でも、今ではこの子の麗しい体を拝見したくて使うに過ぎない、ただのナイフだ。」
その雑誌には、薄い衣を身にまとっている大変刺激的で美しい女性が写っていた。
「俺は、それでいいと思うんだ。誰も傷つけることのないナイフで。」
しみじみと語るディレィッシュに対してハクアは「ふーん」と言った。
「でも、ま、宝の持ち腐れよね。」
「いや、こいつはあくまでもペーパーナイフだ。これがあるべき姿さ。余計な背景なんて、いらないのさ。」
ハクアは再び「ふーん」と気の抜けた相槌をすると、こっそり自分のポケットにペーパーナイフを入れようとした。が、すぐにディレィッシュがその腕を掴む。
「おい、ばか、なんで持ってこうとするんだよ。この前の万年筆も持って帰ろうとしただろ。」
「売ったらどのくらいの値段になるんだろうなと思って。」
「だめ!これは俺の宝物!」
ハクアはチッと舌打ちした。
結局彼はペーパーナイフにあるまじき背景を持った、このペーパーナイフが好きらしい。
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