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Answers①


 ククの恋愛大作戦はターゲットに対してどう効果を発揮していたのか。
 大団円を迎える前に、その成果を覗き見てみよう。


ククの恋愛大作戦はこちら!先にこちらを読んだ方が分かりやすいです。
作戦開始 上目遣いで可愛く見せよう大作戦
接近希望、スキンシップで一歩前進大作戦


 


 夕食、風呂も済ませた俺は今日は後はもう寝るだけだった。
 健康のために俺は割りと早めに寝る。ただ、今日は「マッスルコロシアム3」という体力に自慢がある出演者たちが腕立て伏せや腹筋やベンチプレスなどの記録を競い合う番組がある日だったので、それを見ながらのんびりしていた。
 と、そこへドアをノックする音が聞こえた。「入っていいよ」と返事をすると、おずおずと扉を開けて部屋に入って来るククの姿があった。ククは最近俺の部屋によくやって来る。
「ハッシュ、夜にお邪魔してごめんね。」
「ん、あぁ、別にテレビ見てただけだし、大丈夫だよ。一緒にテレビ見る?」
 ククはこの番組好きじゃないかもしれないが、敢えて誘ってみた。俺はテレビ見たいし。するとククは「ふぇ?」と素っ頓狂な声を出した。テレビを見に来たわけではなさそうだが、まぁいいか。
「ほら、こっちに座って。」
 と言って座布団を敷いてククに座るよう促す。こうでも言わないと大人しいククは座らない。
 そして二人でテレビを見た。ククは男達の熱い狂宴にハラハラした表情をみせる。ククは戦いとか競い合うとかそういうものは苦手だ。多分、こういう番組もそんなに得意ではないのかもしれない。
 と、考えながらテレビを見ていたら、ククが話しかけて来た。手には小さな瓶握られている。
「あ、ハッシュ、あの、ジャムの蓋が開かなくて…。」
「ジャム?今からなんか食べるの?クク、太るぞ?」
 つい思ったことをストレートに口にしてしまい、ククは困り顔になった。。
 ジャムの蓋を開けるくらいならば、俺なんかじゃなくニタに頼めば良いのに、とも思ったが、ニタに開けてもらったら多分半分くらい持っていかれる恐れもある。ニタは食いしん坊だからな。
 ククの手から瓶を預かり、蓋を開ける。意外と固く閉まっていたが、難なく開いた。瓶の中にはまるで宝石のように煌めくイチゴジャムがぎっしりと詰まっていた。甘酸っぱいイチゴの香りがふわりと漂う。
「おいしそうなイチゴジャムだな。明日の朝食がパンだったらちょっとくれよ。」
 そう言いながら、ククの手に瓶を返す。
 ククは黙って俺を見つめる。何か言いたげだが、何も言って来ない。
 せっかく開けてあげたのに礼の一つもないのか。
 と、思っていた矢先、ククの目が潤みだした。
 え、なんだ、俺、なんか変なこと言ったのか?そんな泣きそうな顔で上目遣いされたらどうしたらいいのか分からなくなるだろ。クク、本当にどうしたんだ?
 何か声をかけようと考えていた矢先に、ククは近くのクッションを手に取り、顔を埋めて叫びだした。
「あー、瓶が開いて良かった。これで明日のお菓子の仕込みが出来るー!すっごく嬉しー!」
 …ククのそれは本心なのか信じがたいところではある。なぜならククはこんなに感情を剥き出しにする奴じゃないから。独特の奥ゆかしさと大人しさがあるから、嬉しさはオープンにしない。怒る時は感情をしっかり表に出すけど。
 やはり、何かあったのだろう。きっとニタと何かあったのかもしれない。喧嘩でもしたのだろうか。そうだとすると俺のところまで来て瓶の蓋を開けに来たことにも合致が行く。
 俺はククの頭を撫でながら「そんなに開いて喜ぶほどのジャムならば、すっげー美味しいお菓子が出来るんだろうな。良かったな、クク。」と言った。ククの演技に騙されておこう。
するとククはクッションから顔を離し、まるで小動物のようなおどおどとした警戒心を伴って恐る恐るこちらを見上げて来る。
「・・・お菓子作ったら、またハッシュにあげる。」
「はいはい。いつもありがとうな。」
 この子は本当にお菓子作りが好きだ。前にもとてもおいしいケーキを作ってくれた。きっと家庭的で良いお嫁さんになるのだろうな。アルトフールの男達だったら、誰がククのいい旦那さんになって、ククを幸せに出来るだろうか。意外とククの同郷のクライドも合うかもしれない。あいつならククを一途に大切にしてやれると思う。兄貴やビカレスクはククにふさわしくはないけどな。チャライから。
 って、俺はククの保護者か、と心の中で一人で突っ込みを入れていると、ククは立ち上がって「蓋、開けてくれてありがとう。じゃぁね、おやすみ。」とにっこり微笑んで部屋を出ていった。
 ククには笑顔が似合うと思う。あの泣きそうな顔も、ちょっとドキッとする魔性を感じたが、女の子は笑顔が一番だろう。特にククには笑っていてほしい。沢山苦労した人間だから。


 急所を外した。草トカゲはまた立ち上がってくる。草トカゲ位俺一人で倒せるのに。
「イエリス・レニート・ランテン・ランタン。炎よ、射抜け。」
 ククが呪文を呟いた後、2つの火の玉が草トカゲにぶつかり、草トカゲは掻き消えた。
「まぁ、楽勝だな。」
「うん。」
 ククは両手で杖を持ち、どこか嬉しそうな表情で頷く。今日のククは好調だ。
「さ、とっとと帰るぞ。」
「あ、うん!」
 こんな外れに長居しても何の意味もない。木枯らし吹き荒ぶ中、俺とククは家路に着く。
 ククは一歩離れて俺の後ろを着いてくる。ククは一緒に歩く時、必ず一歩後ろを着いて歩く。
「ハッシュ、そんな薄着で寒くないの?」
 後ろからククの声。
「うん?まぁ、鍛えてるから寒くないな。」
 新陳代謝が良いとはよく言われる。おかげさまで冬に強い。夏にも強いけど。
 と、その時、俺は首にひんやりと冷たい何かを感じた。あまりにも冷たかったので、思わず声が出てしまう。多分、これはククの手だ。
「ちょっと、クク、お前の手、冷たいぞ?」
「鍛えてるんでしょ?」
「それとこれとはまた別ものだ。お願いだから離してくれ。」
 ククの手は生き物のものとは思えない程冷たかった。首元からどんどん体温が奪われていくようだ。この寒空の中素手でいるから、冷え切ってしまったのだろう。
「ふふふっ。」
「ふふふって、クク、お前なぁ…。」
 ククは楽しそうに笑う。今日は本当にご機嫌なククだが、首がひんやりして冷たすぎる。
 振り返ってククの手首を掴んで手を剥がす。
 ククに触られるよりも寒風の方がまだ温かい。
 で、これからどうしようか。ククは悪戯っぽい表情でニヤニヤしながらこちらを見ている。この手を離したら、多分ククは再び容赦なく首なりなんなり俺の素肌を触ってきそうだ。
「クク、随分楽しそうだな。」
「そう?」
「お前の左手は封じさせてもらう!」
 俺はククの手を握った。こうすればおそらくククの手は温まるだろうし、素肌を触られることもない。右手には杖を握っているから、こちらの手では悪戯を起こす気にはならないだろう。
「その冷たい攻撃も封じさせてもらうからな。」
 そう言って俺はククの手を引っ張って、家路に着く。今日のククに背を預けるのは些か不安だが、とっととこの娘を家に連れて行ってやらなければ。手も段々温かくなってきた。
 …しかし、ククは随分と大人しくなってるな。さっきから一言も喋ってないような。
 振り返ってククを見ていると、ククは俯いて顔を赤くしていた。
 風邪でも引いたのか?ちょっとテンションも高かったし…。
 あ。
 よく考えたら、俺はククの手を引っ張って歩いてたけど、これって『手を繋いで』歩いている。ククはもしかすると恥ずかしがっているのか?
 でも、ククはよくニタと手を繋いで歩いているのは見かけるし、俺なんかと手を繋ぐことくらい大したことないはずだろう?
 なんか、ククが変だ。
 
 俺はそのままククとは会話を交わすことなく家の近くに到着した。
 その辺りで丁度フィンがいた。ああ、そうか、今日はフィンは洗濯当番で、洗濯物の取り込みが終わったところなのだろう。大きな洗濯籠を抱えている。
 ククと手を繋いでいるところを見られたら、勘違いされるかもしれないと思い、俺はククの手を解いた。
 でも、別にククとはそういう関係でもないから、別に見られても困ることはないはずだが、あれ、俺は何かやましいことをしたのか?
「あれ、ハッシュ、ククちゃんといい雰囲気だったんじゃないの?」
 洗濯籠から顔を出してフィンが話かけてきた。どうやら俺とククが手を繋いでいたところはばっちり目撃されていたらしい。そうではないことを伝えなければ。
「あ、これはククが冷たい手で俺の首を触って来るから…!大した意味はないよ。」
 言い訳をしようとすればするほど違和感が強くなる。もうこの話題はやめにしよう。
「つか、カゴ、持とうか?重いだろ?」
「わ、いいの?ありがとう。じゃぁ、お言葉に甘えちゃうね。」
 フィンの笑顔と共に俺は洗濯籠を受け取る。フィンの笑顔は可愛いな。フィンの笑顔のためなら俺は何でもできるような気がする。そうして籠を持ちながら、フィンと一緒に家へ行く。
 ふと気が付くと背後のククは居なくなっていた。
 アイツ、風邪なんか引いてなければ良いけど。
 まぁ、今日は警備当番で、夜になったらまたククと会えるし、体調に関してはその時に聞いてみよう。

**********

 夜を迎えたリビングにて。
 警備当番の日は夜は眠れない。夜になっても、魔物は現れるからだ。
 その時に眠ってしまっていると大変なことになる。
 だから、徹夜だ。
 ククが眠気覚まし薬入りのホットココアを作ってくれていたので、今回の警備の徹夜はそんなに大変ではない。
 ククはオレンジ色のランプの光だけで読書をしている。特に具合が悪そうな様子ではなさそうだった。
「クク、あのさ、」
 でも、聞いてみる。ククは我慢している可能性もある。ククは「ん、なぁに?」と言って顔を上げる。
「体、大丈夫か?」
 ククは首を傾げて不思議そうな表情をして「なんで?」と問う。
「午後の魔物を倒した帰りに、クク、顔が赤くなってたから具合悪いのかな、と思って。」
 ぽかんと呆気にとられるククだったが、次の瞬間、はっと何かを思い出し、顔を赤らめた。
「え、えっと、うん、ごめん、大丈夫。」
 ククは視線を泳がせる。
「本当か?無理してない?」
 ククは目だけ残して顔のほとんどを本で隠し、戸惑った様子でこちらを見ている。そして小さな声でぼそぼそと
「あのね、なんというか男の人と手を繋ぐのに慣れてなくて、ちょっと緊張しちゃって…。別に体長は悪くないよ。今日は元気なくらいで。」
と、呟きに近い声で言った。
「まじか、それじゃぁ、なんだか悪いことしたな。嫌だったら嫌だって言ってくれれば良かったのに。」
「…嫌じゃないよ。ハッシュの手温かくて、優しかったから…。」
そう熱っぽい瞳の上目遣いで答えるククに、良く分からないが、なんだか俺まで顔が熱くなってくるのを感じた。
「ん、そうか…。」

 なんか、最近ククが変だ。
 いや、変なのはもしかすると・・・・。

 ククは長い間、苦楽を共にしてきた旅仲間のはずだ。それ以上でもそれ以下でもない。
 少し不安定だけど、芯があって強い心を持っている慈愛に満ちた魔女だ。
 俺はそんなククをニタや兄貴たちと守って来た、ただそれだけだろう? 

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