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白雪姫①


アルトフールの登場人物で白雪姫パロディをやってみました。

☆配役☆

白雪姫…クク
王妃…マナ
王妃(魔女)…ハクア
王…ディッシュ
狩人…クライド

小人たち…ニタ、クルガ、ムー、アルティ、ビスク、アリス、リマ

王子…ハッシュ


 

 雪がしんしんと降る中、とある国の王妃マナは臨月を迎え、お腹が大きくなっていました。
 暖炉には火がくべられており、大変暖かな部屋の中で、王妃は生まれてくるであろう子供のために窓際で裁縫を行っていました。マナは王妃ということもあり、手先が器用ではなかったので、何度も自分の指に針を刺していました。ですが、じぶんの子供のためと思い、王妃マナは根気強く裁縫を続けていました。
 ところが、彼女はふと外の様子が気になり、黒壇で出来た窓枠を開け放ちました。外は曇天で暗く、陰鬱としていました。雪も脛の半分まで積もっていました。
 王妃マナは振って来る雪を掴もうと宙に手を差し伸べました。すると、パタパタと、足元の積雪の上に赤い血が3滴ほど滴り落ちました。気付かないうちに王妃マナは針で指を刺してしまっていたようで、そのために出て来た血でした。
 王妃マナは、真っ白な積雪の上に落ちた赤い血を見つめながら、ぼんやりと思いました。
(世継ぎのためには男の子が生まれて欲しいけど、もし生まれてくる子が女の子だったら、肌は雪のように白くて、この血のように赤い頬と唇を持った子がいい。そして髪の毛はこの黒檀の窓枠のように黒だったら、大変可愛らしいでしょうね。)
「マナ、そんな寒いところにいたら、体に良くないだろう。」
 王であるディレィッシュがやってきました。外に出ていた王妃マナを見つけると、優しく肩を抱いて部屋に連れ戻します。
 王妃マナは元の椅子に腰かけ、微笑みを浮かべながらディレィッシュ王に話しかけます。
「今、生まれてくる赤ちゃんのことを考えてたの。」
「ほう。」
「世継ぎのためには男の子が良いと思うんだけど、もしも女の子だったら、頬が赤くて、肌も白くて、黒髪の子が良いな、と思ったの。」
「私達の初めての子ではあるが、男の子であろうと、女の子であろうとまぁ関係ない。私達の愛の証を沢山作ればいいだけの話だ。マナが望むなら、黒髪で白い肌で、赤い頬と唇をもった女の子でも構わない。さぞかしマナに似て可愛かろう。」
 そう言って王は優しくマナの頭を撫でつけました。
 マナは慈愛に満ちた瞳でお腹を見つめ優しく撫でるのでした。
「女の子だったら、白雪姫と名付けたい。」
「マナが望むならば。」
 

 そうして1か月後、王妃はその身を犠牲にして、子供を産みました。王妃が願った通り、赤ちゃんは女の子でした。
 生まれたばかりの赤ちゃんは王妃が望む白い肌、黒い髪、真っ赤な頬、唇と判別しづらかったので、王は赤ちゃんの名前を国の英雄である魔女クグレックから拝借し、ククと名付けました。
 王は王妃が亡くなったことをとても哀しみました。しかし、寛大な心を持った王は王妃の忘れ形見であるククをそれはそれは大切に育て上げたのです。そして、ククは王妃が望んだ通りの黒い髪、白い肌、赤い頬、唇を備え持ち、いつしかククは白雪姫という愛称で呼ばれるようになりました。


 そうして10年後。白雪姫ククは可憐な美少女に成長していました。
 そして、王は後妻を迎えることを決意しました。王はマナのことは未だ忘れることが出来ていません。しかし、王は国のために世継ぎを作ることも考えなければなりませんでした。マナの忘れ形見である白雪姫ククだけでも構いませんでしたが、それでも自分の国のことを考えると致し方ありませんでした。
 王が新しく迎えた王妃の名前はハクアと言いました。うねるような紅い髪が特徴です。背が高くてスタイルも良い大変美人でしたので誰もが彼女の虜になりました。
 そして、王妃ハクアは常に自信に満ち溢れていました。その姿勢、表情、立ち振る舞い、全てに自信が満ち溢れているのです。婚姻の儀式を行った時は凛とした様子で王妃ハクアは国民に己のメッセージを伝えました。そのメッセージは前王妃を称えるものでもありましたが、それでも彼女は彼女らしくまっすぐにこの国のために生き抜くというメッセージを残し、人々の心に強烈な生きる力をもたらしました。王妃ハクアの国民からの人気はすぐに集まりました。
 ただ、王妃ハクアは、一つだけ悩みがありました。それは、王ディレィッシュが一向に前王妃マナのことを忘れてくれないこと。王ディレィッシュは決してハクアをないがしろに扱うことはありませんでしたが、一向に王の心を手にすることが出来ない王妃ハクアは寂しさを募らせていました。

 そんな寂しさを紛らわすかのように、王妃ハクアは夜中に人目を忍んで秘密の部屋に籠ります。
 そこには豪華に金の装飾が施された鏡がありました。
 王妃ハクアは毎夜毎夜その鏡に尋ねるのです。
「鏡よ鏡。この世で一番美しいのはだあれ?」
 と。
 うっとりと陶酔しきった表情で、鏡の中の自分に問いかけると、鏡の中の王妃ハクアは自身に満ちた表情でこう答えるのです。
「それは王妃様です。」
 と。
 その答えを聞くことが出来た王妃ハクアは、ほうと恍惚のため息を吐きます。そして満足そうに鏡の中の自分を見つめると、秘密の部屋を後にします。
 

 それから2年後。王妃ハクアは未だに寂しさを抱きながら、過ごしていました。そして、深夜に秘密の部屋に籠っては、鏡に誰が美しいのか尋ね、それが自分であることを確認し、その傷付いた自尊心を癒していました。
 ところがある日、異変が起こりました。
「鏡よ鏡。この世で一番美しいのはだあれ?」
 王妃ハクアの問いに、鏡の中の王妃は無表情で答えます。
「それは白雪姫です。」
 陶酔した王妃ハクアの表情は一瞬にして凍り付きます。
「もう一度聞く。この世で一番美しいのは誰?」
 鏡の中の王妃は淡々と答えます。
「それは白雪姫です。マナとディレィッシュの間に誕生した白雪姫ククです。」
 王妃ハクアの顔は悔しさに歪みます。鏡の中の彼女は相変わらず無表情でした。
「…白雪姫…。」
 王妃ハクアは鏡に手をかざします。すると、鏡に靄がかかって白くなったかと思うと、鏡はすやすやとベッドで眠る白雪姫ククを映し出しました。王妃ハクアの表情は凍り付いたままでした。冷たい瞳で白雪姫を見つめると、傍にあった金の錫杖を鏡に叩きつけました。バリンという大きな音と共に鏡には大きな亀裂が入りました。
「おのれ白雪姫。許さない…。」
 その瞳には憎悪の炎を宿していました。王妃ハクアは、錫杖を投げ捨て、秘密の部屋を後にしました。
 鏡に入った大きな亀裂は、いつの間にか消え失せて再び傷一つない鏡面に戻りました。


 翌日。
 白雪姫ククは城の中庭でお花摘みをしていました。そこへ現れたのは狩人でした。
 この狩人は王妃ハクアがこの城に来た時と同じくらいにやって来た狩人です。普段は城の裏にある森の近くの小屋に住んでいます。歳は20代くらいでしょうか。全く表情を変えませんし、あまり喋らない男なので、白雪姫は暗い人だと思っていました。しかし、その綺麗な金色の髪と青い瞳、整った顔立ち、時折白雪姫に見せる優しい眼差しに、白雪姫は悪い人ではないということだけは感じていました。
「あら、狩人さん、何か御用ですか?」
「…お前はここにいてはいけない。」
「…どういうことですか?」
 狩人は一瞬悲しそうな表情を見せましたが、すぐにいつもの無表情に戻りました。白雪姫はその様子を見逃しませんでした。心優しい白雪姫は何事かと心配になって、狩人の跡を着いて行きました。二人は城の裏にある森の中へ入って行きました。
 狩人は白雪姫と手を繋いで森の中奥深くまでやってきました。
 そして、その腰に下げていたボウガンを白雪姫に向けます。
 あどけない表情で白雪姫はボウガンを向けてくる狩人を見ます。
「狩人さん、これからなにするの?」
 狩人は言葉を発することなく、そして、表情も変えることなく、白雪姫にボウガンを構え照準を合わせます。
「狩人さん、私こんなに森の奥まで来たのは初めて。暗くてちょっと怖いけど、木の香りが良い香り。」
 純粋無垢な白雪姫を前に、狩人はボウガンを打つのを躊躇います。しかし、容赦なく狩人はボウガンを打ち放ちました。
 ピュンと風を切る音が白雪姫のすぐそばを駆けました。
 その瞬間「ぐおおお」という低い悲鳴が聞こえ、どさりと何かが崩れ落ちる音が聞こえました。
 狩人はボウガンをその場に落としました。そして白雪姫の前にひざまづき、その小さな体を抱きしめました。
「白雪姫、お前は生きると良い。ただ、もう二度と城に戻ってはいけない。この森の先にお前を助けてくれる者がいるはずだから、行くんだ。」
「狩人さんは?」
「私は、…あぁ、忘れ物をしたから、それを取りに行ってから行こう。だから、白雪姫は先に行ってくれ。」
「うん、分かりました。」
 実際、白雪姫は心細く感じていました。しかし、後で狩人が来てくれるならば、と思い首を縦に振りました。
「ああそうだ。」
 そう言って狩人は先ほどの低い悲鳴があったところに行ってしゃがみ込みました。ぐちゃ、ぐちゃりと嫌な音がしました。
 しばらくして、狩人は皮袋に液体を満たして戻ってきました。
「これを一口飲むんだ。」
 そう言って白雪姫は皮袋を受け取りました。中には赤い液体が入っていました。鼻に残ってしまいそうな変な匂いがしましたが、白雪姫は狩人が言う通り素直に赤い液体を一口飲みました。それは臭くて鉄のような味がしてとんでもなくまずいものでした。白雪姫は舌を出して顔をしかめました。
 この赤い液体は、イノシシの血でした。狩人がボウガンの狙いを定めた先にはイノシシがいたのです。ボウガン1発でイノシシは死にました。そのイノシシから採った血だったのですが、白雪姫は血を見たことがなかったので、自分が飲んだ液体が何だったのか分からなかったのです。
「良く飲んだ。これでしばらくは大丈夫だろう。」
 それから、狩人に送り出されて白雪姫は森の中を彷徨い歩きました。
 どのくらい歩いたか分かりませんが、白雪姫は一軒の小さな家を見つけました。この家からは大きな木が生えていました。
 白雪姫は、普段はこんなに歩くことはなかったので大変へとへとになっていました。とにかく休みたかったので、この小さな家に入って休むことにしました。
 家に入ると、家から生えて来ていたように見えた大きな木は部屋の中から生えていました。また、小さなベッドが7つ並んでありました。他には小さな台所、大きなテーブルと7つの小さな椅子。12歳の白雪姫にも少し小さいくらいの椅子やベッドでした。白雪姫はとにかく疲れていましたので、ベッドを繋げて、そこに横になって眠りました。
 
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 2015_02_28

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