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砂糖菓子で出来た悪夢①



  お題をお借りしております→chocolate sea





 アルトフールには医者がおり、技術者がいる。食べ物を捌く者もいれば、住人を外敵から守る者がいる。様々な個性が集まって、アルトフールは絶妙なバランスで生活が成り立っている。今のところ致命的な欠如はアルトフールには存在していない、筈だった。

 ある午後の昼下がり、アルトフールでの医療に携わる第一人者であるハクアと守護者兼マスコットキャラクターであるニタはリビングにいた。リビングには二人しかおらず、二人は小さな箱を囲んでひっそりと静まり返っていた。
「良い?これは私達〝白色同盟”だけの秘密だからね。」
 ニタはハクアをしかと見つめて、力強く頷いた。
 ハクアも力強く頷くと、小さな箱に手をかけ、その蓋を開けた。
 その中には動物の姿を模した可愛らしい人形と色とりどりの花や鳥を模したボタン大のガラスの小物が入っていた。
 ハクアは紅い花をつまむと、それを口に運んだ。ニタも青い鳥をつまんで口に運んだ。
 ふわっと広がる砂糖の上品な甘い味。舌触りも滑らかで、優しい。
 二人は幸せそうに頬っぺたを抑える。
「上品なお味~!」
「おいしい~!」
「流石伝説とも呼ばれるアルフェン糖で作られた飴だね。砂糖だけでこんなに違うなんて、やっぱ素材にはこだわるべきだ。」
「そうね。ちょっと、ニタ、飴を噛んで御覧なさい。」
 ハクアに促され、ニタは口の中で転がっている飴をガリと噛む。すると噛んで割れた飴の中から、じゅわりと砂糖水が溢れ出来た。ニタは口を閉じたまま「うおー」と興奮し、目を爛々と輝かせる。
「でしょう。中の汁も極上の甘さでしょう。」
 ニタは何度も何度も頷く。
「ニタ、この人形も食べてごらんなさい。」
 ニタは恐る恐る小箱に入った人形を口に入れる。一口では口に入りきらなかったので、頭の部分だけ口に含んだ。
 人形の方は花鳥とは全く異なる食感であった。
 ニタはケーキの上にある砂糖菓子の食感を想像していたのだが、食感は少々異なっていた。独特の柔らかさはあるが、どちらかというとメレンゲの焼き菓子のようにサクサクとしている。そしてふわりと舌の上で溶けた。甘い味がニタの口の中に広がる。
「うわわ、やばいね、これもめっちゃうまい。」
「でしょう?」
「他の人にあげられないのが残念だ。いや、これはニタ達だけで食べちゃおう。」
「えぇ、それでいいのよ。うふふ、ほんと美味しいわよね。」
 ハクアも人形を頬張る。
「それにしても、どうしてアルトフールはアルフェン糖のお菓子を禁止しているのかしらね。」
「知らない。でも、アルフェン糖は希少な砂糖だから、その辺りに問題があるのかな。」
「例えば、アルフェン糖を精製するのに何百人もの犠牲が払われてるとか?」
「人間の血液を吸収して育っているとか?」
「あぁ、その辺り、怪しいわね。」
「背徳の砂糖菓子ってわけか…。」
 秘密のお菓子を頬張る二人の背後に忍び寄る影1つ。
「動く生き字引ハクアはアルフェン糖のこと、知らなかったのね。」
 ハクアとニタはびくりと体を強張らせて、動きを止める。そして恐る恐る振り向くと、そこには笑顔のアリスが立っていた。
「アルフェン糖、通称『拷問糖』。アルフェン糖って呼ぶのはここ再生と滅亡の大陸のみよ。」
 アリスが穏やかに説明すると、ハクアははっとして口を抑えた。見る見るうちにハクアの顔は青ざめていく。
「拷問糖…!そういうことだったのね!」
 ニタは説明を求めるようにハクアを見つめるが、気付いてもらえなかった。
 アリスは微笑みのまま話を続ける。
「そういうこと。だから、アルトフールではこれを禁止してるの。だって、ハクアには治せないでしょう?」
「…そうね。痛みを抑えることが出来ても、これだけは私の専門外だわ。」
「ねぇ、一体どういうこと?ニタにも教えてよ!」
 しびれを切らしたニタが、説明を求め発言したが、ハクアは青ざめた顔のままニタの頭を撫でた。
「今晩分かるわ。さ、ニタ、甘いものを食べたら歯を磨かなきゃ。行くわよ。」
「えー、まだ残ってるじゃん。」
 と言って、ニタは小箱の砂糖菓子達を指差すが、アリスがその箱を取り上げ
「残念。このお菓子は決まりに則って処分します。」と笑顔で言ったので、ニタは堪忍してハクアと二人で歯を磨いた。
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テーマ : オリジナル小説    ジャンル : 小説・文学
 2015_06_07

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