と、その時、なにか白いものがクグレックとニタの頭上を飛び越えて行った。そして、紅髪の大女の前に降り立つ。
「メイトー様!」
ニタが叫ぶ。
すらりとした美しい毛並みの白い猫が前足をぴったりと前に揃えて、ぴしりと姿勢を正して紅い髪の大女の前にすまして居座る。神々しいまでに白く輝く毛並みを持つこの猫は、この森を治めるメイトーである。マルトの村人はメイトーを神格化しているが、メイトーはなんの変哲もない白猫だ。ただ、人間よりもずっと長生きをするし、不思議な力も使える少々特殊な白猫であった。
紅い髪の大女はそんなことを知ってか知らずか、メイトーを前に余裕の表情を見せていた。
「へぇ、アンタがこの森の守護神メイトーね。随分綺麗な猫ちゃんじゃないの。」
「メイトー様を馬鹿にするな!」
ニタは這いつくばりながら、怒鳴りつける。
メイトーは威嚇するように、毛を逆立てて紅い髪の大女に向かって牙を見せると、光の速さで飛びかかって行った。
大女はキャーと悲鳴をあげた。その顔には合計6本のひっかき傷が出来ていた。
「え…。」
ニタは若干戸惑っていた。クグレックも展開に戸惑っていたが、メイトーは何事もなかったかのように、再び優雅に前足を揃えて紅髪の大女の前に座る。長い尻尾だけがまるで別の生き物のように優雅に動いていた。
「この糞ネコめ、アタシの美しい顔に傷をつけたわね!」
紅髪の大女は蛇の飾りがついた杖を手に取ると、何かをブツブツ唱えて、天に掲げた。すると、杖からキラキラした光が発生して大女を包んだかと思うと、6本のひっかき傷は跡形もなく消えていた。そして、痺れたと言って尻餅を着いたままでいた大女がすっと立ち上がり「よくもやってくれたわね…。」と言って、メイトーに向かって杖を振り上げた。
ところが、紅髪の大女は急に焦り出す。自身の体が徐々に透けて来ているのだ。
「や、なに?体が透ける!え、ど、どういうこと?」
メイトーはぐるるると喉で唸りながら、大女から視線を外さない。尻尾ばかりが蛇のように妖艶に動いていた。
紅髪の大女の体は徐々に向こう側が透けて見えるようになっていた。自身に発生した異常にパニック状態になり、何度も自身の体をさすっている。しかし、体の先から徐々に透けて消えていき、紅髪の大女は今にも泣き出しそうだった。
「や、やだ、アタシ、死にたくない。いや、いやよ、まだ生きていたい!」
彼女は必死で拒むが、メイトーが可愛らしい声で「ニャー」と一鳴きすると、紅髪の大女の姿は忽然と消えてしまった。
騒々しい大女の声が止み、森の中には静けさが戻った。
「メイトー様!」
ニタが叫ぶ。
すらりとした美しい毛並みの白い猫が前足をぴったりと前に揃えて、ぴしりと姿勢を正して紅い髪の大女の前にすまして居座る。神々しいまでに白く輝く毛並みを持つこの猫は、この森を治めるメイトーである。マルトの村人はメイトーを神格化しているが、メイトーはなんの変哲もない白猫だ。ただ、人間よりもずっと長生きをするし、不思議な力も使える少々特殊な白猫であった。
紅い髪の大女はそんなことを知ってか知らずか、メイトーを前に余裕の表情を見せていた。
「へぇ、アンタがこの森の守護神メイトーね。随分綺麗な猫ちゃんじゃないの。」
「メイトー様を馬鹿にするな!」
ニタは這いつくばりながら、怒鳴りつける。
メイトーは威嚇するように、毛を逆立てて紅い髪の大女に向かって牙を見せると、光の速さで飛びかかって行った。
大女はキャーと悲鳴をあげた。その顔には合計6本のひっかき傷が出来ていた。
「え…。」
ニタは若干戸惑っていた。クグレックも展開に戸惑っていたが、メイトーは何事もなかったかのように、再び優雅に前足を揃えて紅髪の大女の前に座る。長い尻尾だけがまるで別の生き物のように優雅に動いていた。
「この糞ネコめ、アタシの美しい顔に傷をつけたわね!」
紅髪の大女は蛇の飾りがついた杖を手に取ると、何かをブツブツ唱えて、天に掲げた。すると、杖からキラキラした光が発生して大女を包んだかと思うと、6本のひっかき傷は跡形もなく消えていた。そして、痺れたと言って尻餅を着いたままでいた大女がすっと立ち上がり「よくもやってくれたわね…。」と言って、メイトーに向かって杖を振り上げた。
ところが、紅髪の大女は急に焦り出す。自身の体が徐々に透けて来ているのだ。
「や、なに?体が透ける!え、ど、どういうこと?」
メイトーはぐるるると喉で唸りながら、大女から視線を外さない。尻尾ばかりが蛇のように妖艶に動いていた。
紅髪の大女の体は徐々に向こう側が透けて見えるようになっていた。自身に発生した異常にパニック状態になり、何度も自身の体をさすっている。しかし、体の先から徐々に透けて消えていき、紅髪の大女は今にも泣き出しそうだった。
「や、やだ、アタシ、死にたくない。いや、いやよ、まだ生きていたい!」
彼女は必死で拒むが、メイトーが可愛らしい声で「ニャー」と一鳴きすると、紅髪の大女の姿は忽然と消えてしまった。
騒々しい大女の声が止み、森の中には静けさが戻った。
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