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「ここの村の人は優しい人が多いのかな。」
「うん。なんだかそんな気がする。」
宿屋の部屋を宛がわれた二人は荷物を置いて部屋でのんびりごろごろしていた。外に散歩に行くのも良かったが、これまでずっと歩き通しだったのだ。二人はとにかくゆっくり休みたかった。特に貧弱なクグレックにとって休息は大事だった。
「マルトってさ、」
ニタがぽつりと呟いた。
「北の辺境の地にあって、他との交流がないから、どこか閉鎖的で冷たい印象がするよね。」
「そうなの?」
マルトの村しか知らないクグレックにはニタの言うことが理解できなかった。
「うん。なんというか。エレンは優しかったけど。土地柄っていうのがあるんだよ。」
「トチガラ。」
「そ。ほら、温かい土地の人は大らかだって聞いたことがある?」
「なんで?」
「うーん、たしか、温かい土地は食べ物も豊かでひもじい思いをすることがないし、温かくて服もそんなに着なくていいから開放的な気持ちになるみたいだよ。ククも夏になると、わくわくしない?春でも良いけど。」
クグレックは、春を思い出す。確かに、春から夏にかけては寒い思いをしなくても良いので、嬉しい。温かい土地の人は常に嬉しい気持ちでいるのだろうか、と考えると、クグレックは温かい土地の人々が羨ましくなった。
「因みにニタも食べ物に困らない過ごしやすいところに住んでいたから、こんなにおおらかな性格なのさ。」
鼻高々に語るニタ。
「え、ニタはメイトーの森出身じゃないの?」
クグレックの問いにニタはパチパチと瞬きを行う。ニタは一言「うん」と頷くだけで、それ以上は語らなかった。表情豊かなニタの表情が消えた。だが、またいつもの調子で「だから、メイトーの森はニタには寒かった。」と言った。
妙な雰囲気が流れてしまい、クグレックは話しづらくなってしまった。
ニタがフード付きのローブを着てから、クグレックはニタとなんとなくギクシャクしている。
「さ、クク、そろそろ夕ご飯の時間だし、食堂の方に行ってみようよ。」
「う、うん。」
二人の部屋は2階にあり、1階には宿屋受付と食堂兼酒場があった。正面ロビーの階段すぐ横に受付があり、壁一つ隔てて食堂がある。食堂は大勢の男たちが集まり賑やかで、酒場としての面を色濃く映し出していた。
クグレック達を招いてくれた宿屋兼食堂のおかみさんは忙しそうにしていたが、二人を目にすると、笑顔で席に案内してくれた。窓際の二人掛けのテーブル席だ。
「ごめんね。村の自衛団の男たちが、決起集会で飲んだくれちゃって。ちょっとうるさいと思うけど、我慢してね。」
「自衛団?」
「そ、自衛団。最近山賊がこの辺を荒らし始めててね。狙いがこのあたりにしか存在しない希少種なのよ。それらを守るために、村の若い男たちが立ち上がってね。まぁ、山賊なんかに手なんて出さない方が良いと思うんだけどね。」
「希少種…。」
ニタが呟いた。おかみさんは、男達に酒の注文で呼ばれ、「ご飯はすぐに出すからね」と言って慌ただしく二人の元を去って行った。
希少種とは、不思議な力を持った生き物のことで、生息数が極端に少ない希少な存在なので、希少種と呼ばれている。白猫の姿をしたメイトーも希少種であるし、人語を操り力持ちなニタも希少種である。
「なんだかとってもにぎやかだね。」
決起集会を行う男達を見ながら、クグレックは言った。男達は自分たちに喝を入れたいのか、ただ皆で集まってに楽しく飲みたいだけなのか、良く分からない。ひたすら楽しそうである。
「ここの村の人は優しい人が多いのかな。」
「うん。なんだかそんな気がする。」
宿屋の部屋を宛がわれた二人は荷物を置いて部屋でのんびりごろごろしていた。外に散歩に行くのも良かったが、これまでずっと歩き通しだったのだ。二人はとにかくゆっくり休みたかった。特に貧弱なクグレックにとって休息は大事だった。
「マルトってさ、」
ニタがぽつりと呟いた。
「北の辺境の地にあって、他との交流がないから、どこか閉鎖的で冷たい印象がするよね。」
「そうなの?」
マルトの村しか知らないクグレックにはニタの言うことが理解できなかった。
「うん。なんというか。エレンは優しかったけど。土地柄っていうのがあるんだよ。」
「トチガラ。」
「そ。ほら、温かい土地の人は大らかだって聞いたことがある?」
「なんで?」
「うーん、たしか、温かい土地は食べ物も豊かでひもじい思いをすることがないし、温かくて服もそんなに着なくていいから開放的な気持ちになるみたいだよ。ククも夏になると、わくわくしない?春でも良いけど。」
クグレックは、春を思い出す。確かに、春から夏にかけては寒い思いをしなくても良いので、嬉しい。温かい土地の人は常に嬉しい気持ちでいるのだろうか、と考えると、クグレックは温かい土地の人々が羨ましくなった。
「因みにニタも食べ物に困らない過ごしやすいところに住んでいたから、こんなにおおらかな性格なのさ。」
鼻高々に語るニタ。
「え、ニタはメイトーの森出身じゃないの?」
クグレックの問いにニタはパチパチと瞬きを行う。ニタは一言「うん」と頷くだけで、それ以上は語らなかった。表情豊かなニタの表情が消えた。だが、またいつもの調子で「だから、メイトーの森はニタには寒かった。」と言った。
妙な雰囲気が流れてしまい、クグレックは話しづらくなってしまった。
ニタがフード付きのローブを着てから、クグレックはニタとなんとなくギクシャクしている。
「さ、クク、そろそろ夕ご飯の時間だし、食堂の方に行ってみようよ。」
「う、うん。」
二人の部屋は2階にあり、1階には宿屋受付と食堂兼酒場があった。正面ロビーの階段すぐ横に受付があり、壁一つ隔てて食堂がある。食堂は大勢の男たちが集まり賑やかで、酒場としての面を色濃く映し出していた。
クグレック達を招いてくれた宿屋兼食堂のおかみさんは忙しそうにしていたが、二人を目にすると、笑顔で席に案内してくれた。窓際の二人掛けのテーブル席だ。
「ごめんね。村の自衛団の男たちが、決起集会で飲んだくれちゃって。ちょっとうるさいと思うけど、我慢してね。」
「自衛団?」
「そ、自衛団。最近山賊がこの辺を荒らし始めててね。狙いがこのあたりにしか存在しない希少種なのよ。それらを守るために、村の若い男たちが立ち上がってね。まぁ、山賊なんかに手なんて出さない方が良いと思うんだけどね。」
「希少種…。」
ニタが呟いた。おかみさんは、男達に酒の注文で呼ばれ、「ご飯はすぐに出すからね」と言って慌ただしく二人の元を去って行った。
希少種とは、不思議な力を持った生き物のことで、生息数が極端に少ない希少な存在なので、希少種と呼ばれている。白猫の姿をしたメイトーも希少種であるし、人語を操り力持ちなニタも希少種である。
「なんだかとってもにぎやかだね。」
決起集会を行う男達を見ながら、クグレックは言った。男達は自分たちに喝を入れたいのか、ただ皆で集まってに楽しく飲みたいだけなのか、良く分からない。ひたすら楽しそうである。
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